円錐、彗星、光の都(後編) ― 2013年10月27日 08時53分44秒
足穂氏が幻想した、巨大な円錐の頂点に存在する霊妙不可思議な都市。
「これより前に、パナマ太平洋万国大博覧会の夜景の絵葉書を知っていた。それは会場で呼物の宝玉塔から五彩のサーチライトが、夜空を蔽うて放射している原色版だった。これを「ポン彗星の都」の見本にしようと考えた。」(「私の宇宙文学」)
ここで足穂氏が言及しているのは、1915年、サンフランシスコで開かれた「Panama-Pacific International Exposition」のことであり、宝玉塔とは上の「Tower of Jewels」のこと。それにしてもビジュアル的にすごい絵葉書ですね。
こちらも同じ対象を捉えた絵葉書。
上の絵葉書に比べてインパクトは弱いですが、虚空を思わせる闇の中に白々と浮かぶパビリオン群は、いっそう美しく、幻想的です。
足穂氏の脳裏に宿ったのは、あるいはこちらのイメージだったかもしれません。
コメント
_ S.U ― 2013年10月27日 19時49分03秒
_ geomet ― 2013年10月27日 23時52分41秒
3年ぶりのコメット、ならぬコメントです。
いや、これはすごいですね。
足穂の文章は時代のノスタルジアを超えた現代性を持っているので、我々も(少なくとも私は)つい現代の感覚で視覚イメージ化して了解していますが、足穂本人のイメージは実はこういうものだったのでしょうか。
ポン彗星の寂光浄土のイメージが、20世紀初頭という時代性を伴って非常に生々しく迫ってきます。
足穂作品の新しい読み方が示唆されたように感じます。ありがとうございました。
いや、これはすごいですね。
足穂の文章は時代のノスタルジアを超えた現代性を持っているので、我々も(少なくとも私は)つい現代の感覚で視覚イメージ化して了解していますが、足穂本人のイメージは実はこういうものだったのでしょうか。
ポン彗星の寂光浄土のイメージが、20世紀初頭という時代性を伴って非常に生々しく迫ってきます。
足穂作品の新しい読み方が示唆されたように感じます。ありがとうございました。
_ 玉青 ― 2013年10月28日 22時16分32秒
〇S.Uさま
あ、なるほど。私も上の絵葉書を見て何か心に引っかかっていたのですが、それこそクリンケンベルク彗星の姿だったのですね。足穂の場合も、あるいは無意識のうちに彗星の尾をここに重ねて見ていたかもしれませんね。(地平線下に彗星が頭を隠した、例の図そのものは見つかりませんでしたが、尾がいくつにも分かれた彗星の絵は、明治の天文書に載っていました。)
〇geometさま
おお、短周期彗星の回帰を喜んでお迎えいたします。
上の絵葉書はとにかくすごいですよね。これぞ「未来派」好みという感じです。
未来派は過去との決別を宣言しましたが、今では未来派も過去に属するので、その辺のねじれ加減が興味深いです。「過去に漂う未来」と言いますか、「未来から来た過去」と言いますか。そこがタルホ的であり、過去と未来の間をとって、あえて現代的と呼ぶべきゆえんかもしれません(←ちょっと意味不明)。
あ、なるほど。私も上の絵葉書を見て何か心に引っかかっていたのですが、それこそクリンケンベルク彗星の姿だったのですね。足穂の場合も、あるいは無意識のうちに彗星の尾をここに重ねて見ていたかもしれませんね。(地平線下に彗星が頭を隠した、例の図そのものは見つかりませんでしたが、尾がいくつにも分かれた彗星の絵は、明治の天文書に載っていました。)
〇geometさま
おお、短周期彗星の回帰を喜んでお迎えいたします。
上の絵葉書はとにかくすごいですよね。これぞ「未来派」好みという感じです。
未来派は過去との決別を宣言しましたが、今では未来派も過去に属するので、その辺のねじれ加減が興味深いです。「過去に漂う未来」と言いますか、「未来から来た過去」と言いますか。そこがタルホ的であり、過去と未来の間をとって、あえて現代的と呼ぶべきゆえんかもしれません(←ちょっと意味不明)。
_ S.U ― 2013年10月29日 19時23分28秒
>尾がいくつにも分かれた彗星の絵
タルホさんは、ひょっとしたらこういうような↓原書を見たことがある可能性もあるのでしょうか。
http://mononoke.asablo.jp/blog/2007/06/03/1553103
なんせ自著すら蔵書に持たず、それでいて子どもの時から外国の雑誌など見ていた人ですからね...何とも推測が効きませんね...
タルホさんは、ひょっとしたらこういうような↓原書を見たことがある可能性もあるのでしょうか。
http://mononoke.asablo.jp/blog/2007/06/03/1553103
なんせ自著すら蔵書に持たず、それでいて子どもの時から外国の雑誌など見ていた人ですからね...何とも推測が効きませんね...
_ 玉青 ― 2013年10月30日 05時57分19秒
可能性は無きにしも非ずですが、右に同じく、なんとも推測がつきません。
しかし、いかにも構図は似ていますねえ。
しかし、いかにも構図は似ていますねえ。
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ひょっとすると、タルホさんは、有名なクリンケンベルク彗星(1743-44)の図を連想されたのかもしれません(タルホさんがこの彗星の図を見たかどうかは存じませんが)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Klinkenberg.jpg
また、こちらの方のブログ↓の中程にも、パナマ太平洋万国大博覧会のイルミネーションの写真だと思われるものがありますが、すさまじいです。
http://blog.livedoor.jp/momo2011/archives/3774025.html
当時の写真でこんなに夜景が写ったものでしょうか。