ブベ商会の記憶…ガラスの中に息づく甲殻2013年12月15日 14時51分42秒

オゾーは解剖模型、デロールは剥製というふうに、各博物商にはそれぞれ得意分野があるにせよ、基本的に「博物」というぐらいですから、その取扱品目は広く万般に及んでいました。デロールにしたって、戦前は剥製商よりも「教材商」の顔の方がメインで、人体模型から物理実験機器、教室用の家具まで、それこそ何でも扱っていました。

(デロールの古いカタログ類)

ブベ商会も事情は同じです。下のページから1938年の同社のカタログをオンラインで読めますが(左側の「View the book」欄から読み方を選択)、おそらくこれも取扱い品目のごく一部に過ぎなかろうと思います。
https://archive.org/details/CatalogueN.Boubee1938

もちろん限られた店舗にその在庫を全部抱えられるわけはないので、同業者の網の目の中で中継ぎや委託販売、OEM生産など、製造から販売まで相当複雑な流通経路があったのでしょう。

ともあれ、博物商が元気だった時代、不思議な器具や珍奇な標本が盛んに流通し、街角のショーウィンドウをにぎにぎしく飾っていた時代が懐かしく、また羨ましく思います。

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そんな時代の形見として、ブベ商会のラベルを貼った品が手元にもう1つあります。


ザリガニの液浸標本。ベルギーの業者から購入した時点では、黄変したホルマリンに漬かっていましたが、輸送途中で液漏れしたため、エチルアルコールに置換してあります。


売り手の説明によれば「1880年のもの」とのことでしたが、ラベルの形式はブベ商会三代目の時代のものですから、そんなに古くはないはず。ただ、この標本壜は<かぶせ蓋に珠型のつまみ>という見慣れた姿のものより古い形式のようでもあり、時代はいくぶんあいまいです。


いずれにしても、彼がずいぶん長い時をこの壜の中で過ごしてきたのは確かです。ガラス越しに戦争や平和を眺めてきたその目は、おそらく私が死んだ後の世界も見つめ続けることになるでしょう。