愛しの天文玩具2014年01月11日 20時35分20秒

しばらくぶりの更新です。
記事も書かずに何をしていたのか?
実は直後はそうでもなかったのですが、前の記事で触れたオークションの敗北がジワジワ効いてきて、一時は憤死せんばかりでした。

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―ときに、Googleのサービスに、WEBページを丸ごと翻訳してくれるというのがありますね。あれを使えば、拙ブログもたちどころに「なんちゃって英語サイト」に変身します。Googleの技術も日進月歩だと思うんですが、日本語と英語の相互翻訳はなかなか向上しません。たとえばブログタイトルの「天文古玩」。以前は「Astrnomical Curio」と正しい訳がついていたのに、さっき試したら、「Astronomical Ko玩」と、えらく劣化していました。もっと以前は、「Astrnomical Old Toy」と訳されていて、これはちょっとうれしい誤訳です。

天文趣味の歴史を探る上で、同時代の玩具に天文学がどのような影響を与え、天文イメージがそこにどう表現されているかは、重要な手がかりを与えてくれますし、モノが玩具だけに、やはり愛玩したくなるようなデザインのものが多い気がします。

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で、今回落札し損ねたのは、19世紀前半に遡る、天文モチーフのボードゲームという大珍品でした。保存状態も良く、12星座、彗星、月、星、太陽が手彩色と金彩で美しく描かれた逸品で…と書いていると、また悔しさがこみ上げてきます。

同時期の天文古書なら山ほど残っているし、財布が許せば購入することに困難はありません。いっぽうゲームというのは、基本的にエフェメラルなものですから、モノ自体残存することが少なくて、金さえ積めばいつでも買えるというものではありません。そして、たまたま出物があっても、勤め人の小遣いの範囲をあっさり超えてしまうことが多いのです(天文マニアだけでなく、ゲームコレクターも参入してくるので、自ずと競争が激しくなるわけです)。

何故あそこでもう一声出なかったのか。無理をすれば買えない額ではなかったのに…。逃した魚は大きいといいますが、実際あれは大魚でした。

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ここで、19世紀前半の天文玩具の実例を見てみます。
ひとつは1829年にイギリスで出たカードゲーム、「Astronomia」。

(上記サイトより寸借)

カードの揃わぬ不完全なセットでも、ニューヨークのGorge Glazer Gallery ではかつて2400ドルの値札をつけており、それも既に売却済みだそうです(http://www.georgeglazer.com/archives/maps/archive-celestial/astronomia.html)。
それにしても、詩情あふれる美しいカードです。上記のブログ主、Kimberly Bright氏ならずとも、これはぜひ復刻版を出してほしいところ。

もうひとつは1804年に、同じくイギリスで出たボードゲーム、「Pleasures of Astronomy」。

Science in Sport, or the Pleasures of Astronomy. A New Game
 (Royal Museums Greenwich Collection)
  http://collections.rmg.co.uk/collections/objects/264736.html

(これまた寸借)

双六形式で遊びつつ、天文学の初歩を身に着けさせる教育玩具です。「振り出し」は太陽で、グリニッジ天文台のフラムスチードハウスが「上り」。18世紀末から19世紀初頭にかけて活躍した、女流サイエンスライターのはしり、Margaret Bryanが改訂者として名を連ねています。

上記のグリニッジ博物館が所蔵する品は、なんでも天文啓発家として有名なRichard Proctor(1837-1888)のお父さんが所有していたものだとか。

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大魚を逃した悔しさから、その後狂気の如く検索を続けた結果、ついに手に入れたのが、この「Pleasures of Astronomy」の彩色版です。1815年に再版されたものですが、盤面の構成は初版とまったく同じ(ただし、盤面を区分して布地に貼り付ける際の分割の仕方が異なっています)。


どうです、いいでしょう?
とはいえ、これは希望すれば誰でも手に入れることができます。なぜなら、写真に写っているのは、ネット上の画像データを原寸大でプリントアウトして、それっぽく貼り合わせたものだからです。
元データはこちら↓。ゲームのルール解説もあります。

Giochi dell'Oca e di percorso (by Luigi Ciompi & Adrian Seville)
 : Science in Sport or the Pleasures of Astronomy

 http://www.giochidelloca.it/scheda.php?id=1384

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こんな手慰みでわずかに溜飲を下げてはみるものの、やっぱり悔しい。。。
「大魚」を迎えるため、事前に「玩具・ゲーム」のカテゴリーまで新設したぐらいですから、それが無駄とならないよう、今後はそっち方面の品を、マメに登場させようと思います。

コメント

_ S.U ― 2014年01月12日 08時08分07秒

これが彗星界にまで届いた問題のそもそもの元ですか。
 
 天文に関するカードゲーム、ボードゲームとはめずらしいですね。カテゴリーとして持つほど世の中に例は多いのでしょうか。

 後者の双六に似た形状の日本語版のボードで(モノポリーまたはバンカースのような)で、「宇宙旅行」というマスのあるので遊んだことがあるような記憶が突然よみがえってきました。もちろん天文ゲームではなく、おそらく金儲けゲームでした。

_ 玉青 ― 2014年01月12日 16時42分13秒

>世の中に例は多い

まあ、多いとも言いかねますが、探せばぽつぽつ見つかります。こういうのは多すぎても手が回りかねるので、少ないぐらいがちょうどいいかもしれません。

そういえば、モノポリーには「Astronomy」というのと、「Night sky」というのと、互いにどこがどう違うのかよく分かりませんが、宇宙をテーマにしたバリエーションが2つあります。大抵ご想像が付くと思いますが、マス目が都市ではなく、天体になっていて、宇宙規模で土地を買占めるゲームのようです。でも天体の規模はお構いなしで、「ハレー彗星$60」と「アンドロメダ銀河$350」が並んでいるのを見ると、頭がクラクラしてきます。(笑)

ふたたびそういえば、今思いついて検索したら、こんな冗談とも本気ともつかないページがありました。
http://www.lunarembassy.jp/

_ S.U ― 2014年01月12日 18時45分21秒

天文ゲームもぼつぼつというか細々というかあるにはあるのですね。こういっちゃ何ですが、やったら面白そうかどうかについては、あまり意気が上がりません。「マイコンゲーム」の宇宙対戦ものは面白かったですが。
 
 「モノポリー」天文バージョンは今あるのは(当然ですが)新しそうですね。昔からあるのでしょうか。いっぽうの「バンカース」はいまでも古色蒼然たる復刻版を売っています。天体の土地に値段が付いているのは、レトロ仮想未来のように感じますね。私のやったゲームについては検索しましたが不詳です。天体の土地に値が付いていたかどうかは忘れましたが、アンドロメダとかあったような気がしてきました。

 「月の土地」販売が現在もあるのには驚きました。でも、中国が月面車をころがす時代には名目だけの登記などもうあんまり流行らないでしょうね。

_ 玉青 ― 2014年01月13日 18時08分24秒

世間に面白いゲームはいくらもありますからねえ。
まあ、こういうのは端的に面白さを求めるよりも、どちらかといえば見て楽しむもの、あえかな風情を愛でるもの…かもしれませんね。(だいぶ言い分が年寄りじみてきましたが・笑)

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