軟体動物の歯舌を染色するにはビスマルク褐を用ゆべし2014年01月13日 17時59分39秒

今日は一日冷たい風が吹いていましたが、頭上は抜けるような青空でした。
屋並みの上に銀色の月が顔を出し、これで三連休も無事終わりです。
今日は鏡開きの餅を焼き、お汁粉を作って食べました。
世間の喧騒をよそに、とりあえず家内は平穏無事。

   ★

理科室趣味を感じさせる最近の買い物から。


古いプレパラート染色液のセット。
京都理化学研究所は、ネットで検索しても引っかからない謎の組織。東京の理化学研究所の沿革には、戦前京都に分室があったような記述はなく、東京の理研とは関係ないのかもしれません。


色硝子の小壜に入った6種セット。
滴下に便利なように、形状は昔の目薬の壜とよく似ています。


「ビスマルク褐」という云い方や、「デラフィルド氏ヘマトキシリン」の「氏」の字の使い方が時代がかっています。「メチーレン」と伸ばすのも古風。


中身はほぼすべて蒸発していますが、赤紫のサフラニン液だけが、わずかに壜の底に名残をとどめています。



ゲンチアンと弁色液の濃淡二様の青い壜。
最初から硝子の色が違うのか、付着した内容液の色の違いかは不明ですが、光に透かせば、いつでもそこに青空を感じることができます。

  ★

実用性はゼロですが、箱全体にどうしようもなく昔の理科室の空気が漂っている品。

コメント

_ S.U ― 2014年01月15日 07時49分20秒

「京都理化学研究所」、謎の組織ですね... 理研コンツェルンにも見つかりません。そのまた子会社かもしれません。

 この染色液セットは、適した用途が表になっていてありがたいですね。私は植物観察が好きだったので、学校で習った酢酸カーミンを自分でも持っていました。当時、こんな表があったら染色液のコレクションを始めていたかもしれません。

_ 玉青 ― 2014年01月16日 23時05分42秒

染色液のコレクション、いいですね。
あれもその道に分け入ると、クリスタル紫とか、ナイル青とか、雅な名称がいろいろあるそうですが、懐かしいといえば、酢酸カーミンと上記のメチレンブルーにとどめを刺します。学習顕微鏡を飽かず眺めた日々。口腔粘膜、タマネギの表皮、ムラサキツユクサのおしべ、アオミドロ…何もかも皆懐かしいです。

_ S.U ― 2014年01月18日 20時53分50秒

>口腔粘膜、タマネギの表皮、ムラサキツユクサのおしべ、アオミドロ…何もかも皆懐かしい
 
 あぁ、そうですね。本当に懐かしいです。

 私は、天文観察については特にブランクという時期がないので何が懐かしいとかいうことはないのですが、(二度と帰らぬ△△彗星の名前が懐かしいということはありますが)、植物の顕微鏡観察は大学を出てからはほとんどしていないので言われてみると胸に迫る懐かしさがあります。
 
 ムラサキツユクサのおしべは、ダンゴの連続構造でしたね。なぜなのかわかりませんでしたし、その穿鑿もしませんでした。きれいな構図になっているところを探して、ただただ眺めていました。

_ 玉青 ― 2014年01月19日 10時32分39秒

戦後の日本では(戦前も?)、学習顕微鏡は学習望遠鏡よりも、その普及台数においてまさっていたと思いますが、趣味としてパワーがあったのは圧倒的に天文趣味だった…というのは、考えてみると興味深い事実ですね。顕微鏡趣味のアマチュア向け商業誌は、ついに1冊も出ませんでしたし、「趣味は顕微鏡観察です」と語る人は、過去も現在も非常に少ない気がします。

他方ヴィクトリア時代のイギリスにあっては、顕微鏡趣味が望遠鏡趣味を凌駕していた事実を考えると、上記のこと(望遠鏡>顕微鏡)は時代と国を超えて、普遍的に真理というわけではなく、やはり社会的・文化的要因によって規定される部分が大きいのでしょう。

その名残なのか、イギリスには今でも顕微鏡趣味にはまっている人が多いようです…と書きかけて、Microscopy-UK のサイト(http://www.microscopy-uk.org.uk/index.html)を見たら、冒頭に“Microscopy as a past-time is under threat and at risk of being lost forever.”と書かれていて、さらにその続きを読むに及び、思わず長嘆息しました。「イギリスよ、お前もか」の感が深いです。

_ S.U ― 2014年01月19日 19時08分20秒

アマチュア趣味として顕微鏡と望遠鏡を比べることは考えたことがありませんでした。私は、小中高生のころは顕微鏡覗きと望遠鏡覗きをパラに走らせていたので、その頃何か考えることはあったかと思いますが、私の場合は、顕微鏡は植物の方面の趣味の一環だったように思います。現在ある意味で顕微鏡覗きの延長のようなことを本職にしていますが、これは天文→物理と来たものです。このような事情は人によって違うでしょうし、もちろん、総体としての「光学趣味」というのも常に考慮に置くべきものと思います。また、生物部や地学部でクラブ活動として顕微鏡を使っていた人のご意見も聞いてみたいと思います。

 ご指摘の顕微鏡趣味がコミュニティとしての普及を見せなかったことは、個人として楽しむもの、という意味合いが比較の上でずっと強いということがあったのではないかと思います。ある意味、その個人性が特徴であっただけに、ご紹介のイギリスのサイトで言っているような顕微鏡趣味の現代の減退というのがあるのかもしれません。今はインターネットと高解像の液晶端末のおかげで、美しい画像が誰でも見られるようになって、個人も何も無くなったことが大きいと思います。

 それでも、みずからプレパラートの広大な天地を動かして、自分だけの美しい光景を探すというのは、広大な天に小さな望遠鏡を向けるのと同様の魅力ある体験だと思いますので、若い方々には、学校その他で顕微鏡を触るチャンスがあれば、ただ覗かせてもらうだけではなく、ぜひ手を動かしてみる体験を楽しんでもらいたいものだと思います。

_ 玉青 ― 2014年01月20日 22時19分30秒

>プレパラートの広大な天地

まさに壺中の天地ですね。
私はプランクトンの観察が好きでしたが、あの異世界感はたしかに天体観測に匹敵するものだったように思います。

望遠鏡と顕微鏡、比較して論ずると、酒飯論とか酒茶論なみに面白いかも。

その後1つ気づいたのは、20世紀以降の望遠鏡趣味には、自作の楽しみがあったことで、完全自作とまでいかずとも、いろいろパーツを作ってチューンナップしたりというのは、多くの人がやったと思います。印象で述べると、顕微鏡は単なる道具・手段であったのに対し、望遠鏡はそれ以上の存在、言ってみれば「愛機」とか「わが分身」という思い入れの対象となった点が、2つの趣味の勢いの違いを生んだのかなあ…とも思います。中には星を見るより、愛機の改造に多くの時間をかけていた人もいるようで、そういうところはちょっとバイク趣味と似ていますね。

この辺のことは、また記事本編でも取り上げて、多くの人の意見を伺ってみたいところです。

_ S.U ― 2014年01月23日 05時01分31秒

プランクトンですか。私は、美しいホシミドロとかクンショウモとか見たかったのですが(これらはプランクトンなのかどうかは知りません)、そういうものはいないので、アオミドロで良しとしていました。

 顕微鏡趣味と望遠鏡趣味の比較、またの日の本文でよろしくお願いします。

_ 玉青 ― 2014年01月23日 20時35分03秒

了解しました。
またS.Uさんの顕微鏡譚などもよろしくお願いします。

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