虹のかけら(7)…虹の正体2014年02月15日 11時36分44秒

虹にちなんで、このシリーズも7回で語り納めにしますが、これまで書いたことには、実は大きな誤りがあります。というのは、虹の正体は決して光のスペクトルなどではなのです。この点に関して、読み手の誤解を招いたことを、幾重にもお詫びします。

   ★

虹が単なる光学現象ではない証拠に、北半球の中緯度地方にある、「虹の谷絵具工場」では、固形化した虹を削り取って絵の具の材料にしていることが、早くから報じられています。(1)


虹は明らかに手で触れることのできる、物質的存在です。

   ★

しかし、実は虹にも多くの種類があって、そのすべてが物質的存在というわけでもないことに注意してください。中には記号の連鎖から構成された、すぐれて抽象的な虹も存在することが分かっています。(2)


その記号を解析すれば、世界のすべての謎が解ける…そう確信した某少年は、記号の転写を熱心に試みますが、何度やっても途中でごちゃごちゃになってしまうことを嘆いていました。

しかし、ある日、少年はその目で見ます。山高帽の男たちが、精巧な装置を用いて、虹の記号をこの上なく正確に読み取っているのを。


男たちの正体と、虹の記号が物語る世界の真実が何であるかは、残念ながらまだ明らかではありませんので、少年のさらなる探求に期待したいと思います。

   ★

虹には、まだまだ多くの秘密があります。
虹の収集と分類こそ、21世紀の博物学にとって恰好のテーマではないでしょうか。


【参考文献】
(1)たむらしげる、『PHANTASMAGORIA』(架空社、1989)、p.13.
(2)コマツシンヤ、「記号の虹」、『睡沌気候』(青林工藝舎、2011)、pp.28-33.

コメント

_ S.U ― 2014年02月15日 19時21分59秒

虹の話に名残りはつきませんが、昔のことを思い出したので一つ紹介させていただきます。

 最近はとんと見ませんが、昔、田舎に住んでいた子どもの頃には、虹が地面のある場所から立ち上がっているのが見られたものです。といいますのは、私は盆地の中に住んでいたので、虹を透かせて向こうの山が見えたり、場合によっては、刈田の地面の手前に虹の柱の元が見えたからです。私はその場所まで行けば、地面から虹がでーんとつっ立っているのかと思いました。でも、そんなうまい話は考えられませんでした。

 機会があればそこまで行ってみようかとも思いましたが、まずは大人に尋ねてみました。すると、虹はそこまで行くとさらに先に逃げる、ということでした。なるほど、うまい逃げ道があるものだと、これには感心したものです。
 
 今でも、虹の柱の建っている所まで行ってみようと考える子どもがいればいいのですがね。

_ 玉青 ― 2014年02月16日 13時15分58秒

これはまたいいお話ですねえ。
虹の柱をどこまでもどこまでも追いかけた子供が、昔は大勢いたのかもしれません。
「そんなわらしの魂が虹さなったげな、おめえは決して虹こさ追ったらなんねえぞ。二度と戻ってこれんくなるでな」と、老人が土間で藁を打ちながら子供を戒めたり。そんな見たはずのない情景まで思い浮かびます。

ときに虹の柱は追っても逃げますが、蚊柱は逃げても追ってきますね。あれはやめてほしいものです。

_ 蛍以下 ― 2014年02月16日 19時06分35秒

吉兆らしいのでお披露目させてください。わかりにくいですが二重の虹です。

http://uploda.cc/img/img5300808d83e98.jpg

中央の濃い虹の外側(向かって右側)に、かすかにもう一本写ってます。(肉眼ではもっと良く見えたのですが・・・)

虹の接地点に近づくと、やはり消えてしまいました。
自分では近づかずに誰かをそこに立たせてみると面白かったかもしれません。

_ 玉青 ― 2014年02月17日 22時04分30秒

おお、背景もピクチャレスクで美しいですね。
副虹もしっかり見えます。これは良いものをご覧になりました。
私も吉兆のおすそ分けにあずかることにしましょう。(^J^)

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック