ガラス、鉱物、祈り(2)2014年04月18日 07時00分42秒



作品名、「歯車修道院」。
この歯車は腕時計や懐中時計用のものらしいので、そもそも小さいです。それが巨大に見えることから、逆にこの修道女の小ささがお分かりいただけるでしょう。


こちらは「祈りの庭」。
目をこらさないと、シスターの存在が分からないぐらいですが、この広々とした空間が小さな電球の中に造形されているのですから、まったく驚きです。
よく見ると修道女のポーズも違っていて、こちらは両手で持った祈りの書にじっと目を落とし、周囲の風の音も彼女の耳には届いていないようです。

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鉱物と祈り。
鉱物に象徴される永劫不変性(現実の鉱物は我々同様、永劫でも不変でもないにしろ)、結晶構造が体現する世界の法則性、そして水晶が備える清澄な純粋性。いずれも「理」に通じる属性でしょう。
かたや祈りは、赦し、平安、救済…すなわち「慈」に通じる行いであり、結局、両々あいまって、ここには人の心が希求して止まぬ世界が表現されているのだと思います。
賢治と足穂がいずれもこの2つを作品テーマにしたことも、故なしとしません。

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大きな大きな物語を小さな小さなガラス空間に封じ込めたzabienaさんの作品。そっと覗き込めば、「壺中の天地」という言葉が自ずと浮かんできます。