コメット侍再登場 ― 2014年04月30日 21時02分35秒
彗星、フランスの天文趣味…と話を続けてきて、ふと、武士の一行が望遠鏡で彗星を覗いている不思議な蒔絵盆を思い出しました。
■1910年、ハレー彗星の思い出(3)
画像を再掲するとこんな品。
で、これについては追加記事を書いて、明治期にヨーロッパで作られた「蒔絵もどき」だろうという結論を下しました。
■過去記事フォローシリーズ…蒔絵風<彗星の図>の正体
実はつい最近、上の結論を強固ならしめ、さらに生産国はフランスと特定できそうな品をeBayで見かけました。
(出品者の商品説明写真を寸借)
ご覧のように、こちらは盆ではなくて蓋つきの箱ですが、絵柄はまったく同じです。
出品者であるフランスの業者によれば、これはナポレオン三世(1808-1873)の時代の品で、「19世紀末の美しい大ぶりの箱。状態良好。彩色の保存状態は完璧。留め具も同様。サイズ23.5×15×5.2cm」とのこと。ナポレオン三世と「19世紀末」ではちょっと時代が合わない気もしますが、1870~80年代頃というニュアンスなのでしょう。素材は木ではなくて紙塑製です。
私も好奇心から入札してみましたが、本来の天文趣味とは距離があるので、あまり気合を込めずにいたら落札しそこねました。最終落札価格は3622円なり。
競り負けたあとで、「ひょっとしたら大魚を逸したのでは…?」と一瞬思いましたが、よく考えたら、同じ絵柄が手箱にも盆にもあるということは、どこかで印刷技法を使って大量生産していたに違いなく、また出会う可能性は十分ありそうです。
それに改めて検索してみると、eBayには似た雰囲気の品がたくさん出品されており、上の品を以て「大珍品」と呼ぶには当たらないようです。(↓参照)
当時のジャポニズムの隆盛を再認識するとともに、あまりにも大量に作られたせいか、今ではこの手の品にまったく人気がないことも知りました。値段は状態が良くても数千円どまりらしいので、あのとき妙な色気を出して、無駄に頑張りすぎなくて良かったと、これは少しほっとしています。
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