我、突沸す。 ― 2014年07月19日 09時50分52秒
突沸という現象がありますよね。
加熱していた液体が、突然沸騰して危ないという。
加熱していた液体が、突然沸騰して危ないという。
仕事をする上でもやはり突沸があります。
そして、危険なことにかけては、液体の突沸以上のものがあります。
ここ2日ばかり沈黙していたのも、やはりそれでした。
これはどうにかしたいものだ…と思って、まず突沸の正体を知ることにしました。
定石通りウィキペディアの記述を見たら、意外なことにウィキには現在「突沸」の項目がなくて、それは「沸騰石」の項目↓に包摂されていました。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%B8%E9%A8%B0%E7%9F%B3)
より簡にして要を得た記述は以下。
いずれにしても、キーワードは「過熱状態」です。
液体が沸点以上まで加熱されたところで、液体→気体の相転移が始まると、その高い蒸気圧によって気泡の爆発的膨張が生じ、周囲の液体を飛び散らせる…それが突沸の正体なのでした。
言い換えれば、突沸の前提に「過熱状態」があるということで、これは仕事上の突沸に当てはめても、非常によく分かります。突沸を経験する人は、見た目は平常通りでも、それ以前にすっかり煮詰まっていたわけです。
いっぽう沸騰石のキーワードは「気泡」。
沸騰石は固有名詞ではなく、いろいろな素材のものがありますが、いずれも多孔質であり、過熱されるとそこから微細な気泡が発生し、その気泡が相転移を促す(その核となる)ことによって、液体が過熱状態になることを防ぐのが役割。
したがって、過熱状態のところに沸騰石を入れると、逆に突沸を誘発して、非常に危険であることも分かりました。
「微細な気泡が核となって相転移を促す」とは、どういう仕組みによるのか、そもそも相転移が生じる瞬間に、ミクロの世界ではいったい何が起こっているのか、その説明はたぶん私の理解を超えると思いますが、たいへん興味深いことです。
宇宙の創生も、仕事上の突沸も、この突然の相転移の問題が絡んでいるのかもしれませんね。そして、後者については、その予防のために、「仕事上の沸騰石」をぜひ見出したいところです。
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ところで、沸騰石って何となく懐かしい響きがありますが、そもそもいつからあるのかな?と思って調べてみたら、ケンブリッジ大学の次のページに行き当たりました。
■http://www.hps.cam.ac.uk/people/chang/boiling/stones_more.htm
これによると、沸騰石というアイデアが生まれるきっかけになったのは、金属粉やガラス粉を入れておくと、ガラス器内の温度が有意に低下するという、ゲイ=リュサック(1778-1850)の実験で、19世紀末までに沸騰石の利用は技術者・科学者の間で一般化していたと書かれています。
Hasok Chang氏による、上のページを含む全体のコンテンツは、「沸点という神話」という刺激的なタイトルが付いていて、「水は100度で沸騰するというのは単なる神話だ!」と断じていますが、沸騰という見慣れた現象も、考え出すとなかなか奥が深いですね。
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さらにまた、「突沸」をキーワードに国会図書館のデータベースで文献を探していたら、全国味噌技術会という団体が発行する『味噌の科学と技術』という雑誌に、安平仁美氏らによる「みそ汁の突沸」という論文が載っているのを知りました(1986年10月号, pp.337-340)。
味噌汁の突沸もさることながら、『味噌の科学と技術』という<味噌雑誌>があったことにも驚きました。まこと世に科学の種は尽きまじ。
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「キミ、忙しいっていいながら、結構ヒマなんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、なかなかそうでもないのですよ。
見た目では分からないのが「過熱状態」の恐ろしいところです。
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