真夏に肝を冷やす話2014年07月30日 07時15分54秒

全然スレ違いですが、涼を求める方に、こんな話はどうでしょうか。

   ★

以前、世界中の素敵なライブラリーを紹介しているサイト「Beautiful-Libraries.com:The Most Beautiful Libraries in the World」をご紹介しました。

理想の理科室風書斎を求め、世界のライブラリーに分け入る
 http://mononoke.asablo.jp/blog/2012/08/19/6547212

その後、新しいコンテンツを期待して訪れたら、こんな告知文が載っていて呆然(以下、適当訳)。

   ★
   

Beautiful-Libraries.comへようこそ。

私はこれまで、世界中の美しいライブラリーの画像を千枚近く集めてきました。その成果をお楽しみいただいた方々に、まことに申し訳なく思いますが、私はもはや当サイトを以前のような形で維持することができません。

我が国の著作権法に照らして、私に共有権が認められていない画像をシェアすることは、明らかに違法だと最近知ったからです。実際問題、我が国の厳格な法令は、Pinterstや、他の多くのフォト共有サイトで画像をシェアをしている何百万人もの人々を、れっきとした犯罪者に仕立て上げています。

私はこれまで画像の出典を(さらに分かれば撮影者名も)明記し、画像のシェアから1円の儲けを得ることもなく、また著作権者から求められれば、即座に画像を削除したり、(誤記や省略があれば)出典の訂正を行ってきました。

しかし、どうやらそれだけでは、手早く和解金を狙う法律ゴロ(?原語はlegal trolls)から我が身を守るには不十分らしいのです。下の記事をご覧ください。
http://www.roniloren.com/blog/2012/7/20/bloggers-beware-you-can-get-sued-for-using-pics-on-your-blog.html
http://www.contentfac.com/copyright-infringement-penalties-are-scary/

そこで私は大きな悲しみをもって決断しました。オンラインでの画像シェアを巡って、徐々に広まりつつある高額訴訟のリスクに、我が身をさらし続けることはもはやできないと。

美しいものを広く他者と味わい、共有したいという思いを挫くために、知的財産法が使われるのは、とても悲しいことです。数年前、私は知財法に関する本〔下記リンクで全頁公開〕を読み、それが自由な社会に不要であるばかりか、むしろ全体として有害であると信じるに至りました(こう言うと、知財法のおかげをこうむっている一部のアーティストや、企業の多くは憤慨されるでしょう。でも、この本が挙げる多くの考え抜かれた論点は、私を十分納得させるものでした)。
http://library.mises.org/books/Stephan%20Kinsella/Against%20Intellectual%20Property.pdf

ひょっとしたら、我々はいつか破産や刑事告発の恐れなしにアイデアを共有できる世界に住めるかもしれません。でも、そういう時代はまだ訪れていません。

無節操な著作権弁護士の被害者とならぬよう、私は皆さんが知財法の乱用について学ばれることを切にお勧めします。ご自身のものである画像を除き、明示的許可を得ていない画像をシェアしていないか、十分用心なさってください。あなたは常に法律ゴロと隣り合わせであり、彼らは最高15万ドルであなたを訴えることができるのです(もっとも、彼らは5千ドルなにがしプラス訴訟費用で、すぐに手を打ってくれますが)。このことは、経済的損害の有無や、それを与える意図の有無に関係ありませんし、あなたが法律の存在を知っていたかどうか、あるいは最初に画像の削除を求められたかどうかも無関係です。「適正使用(Fair Use)」の考えは、インターネット上の画像共有には適用されません。Pinterestのユーザーは、くれぐれもご用心を。

私自身の書斎を写した写真は、左欄の「My Libraries」のページに、また書斎作りについて書いた短文は、「Elements of Libraries」のページに残しておきます。ライブラリーに関するお勧めの記事や書籍へのリンクは、サイトのトップに残してあります。それ以外のページはすべての写真を削除済みです。

悲しみと絶望にくれて― べス

   ★

なんと世知辛いことでしょう。
そしてヒヤッとしました(身に覚えのある方は他にもいらっしゃるはず)。

私は海賊版の横行を是認するわけではなく、著作権を尊重することにやぶさかではありませんが、その一方で牧歌的な大らかさも欲しく、実害(相手が不快に思うことも含めて)がなければ、そう目くじらを立てんでも…と考えるのですが、でも、これがアメリカン・スタンダードであり、世界の大勢なんでしょうか。

まあ、良識の通用しがたい世界も存在するので、やむを得ないのかもしれません。が、それにしても…

(今回の記事は、さすがにべスさんご本人の許可を得ようと思いましたが、すでにCONTACTのページも閉鎖されていて、連絡不能でした。もしべスさんがこの記事をご覧になる機会があれば、ぜひ諒とされんことを。)

コメント

_ 蛍以下 ― 2014年07月30日 13時50分43秒

厳しいですねぇ・・・
詳しいことは知りませんが、厳密には個人間のメールに添付するだけでもダメらしいですね。
日本も弁護士を増やしましたから、アメリカと同じ轍でしょうか。

_ S.U ― 2014年07月30日 20時19分02秒

アメリカはきびしいんですかね。

 日本で、「著作権」として昨今世間で言われていることについては拡大解釈があるように思います。

 日本の著作権法では「著作物とは、『思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの』」(著作権法第二条)となっています。社会科学・自然科学の分野では、個人の思想や感情や創作に左右されるものは客観資料の価値はないので、資料として価値のあるものは著作権法の対象外となり、実際、自然科学の論文、図版については著作権が生じないとされた判例もあるようです(Wikipedia「著作権」)。

 近年、科学論文の文献引用無しコピペが問題になっていますが、あれは「業界内の掟」であると、武田邦彦氏が説明しています。実際、引用は合法で文献リストに載せるのを忘れてもそれだけでは法に触れるものではないですし、三平方の定理を使うたびにピタゴラスさんに謝辞を書き、赤外線の測定に触れるたびにハーシェルさんを引用することまでは要求されていませんので、確かに仲間内のマナーのようです。

 もし、科学データ(科学写真を含む)の利用に問題があるとすれば、データの占有権(または(排他的専有権))くらいであると思います。占有権は所有権に準ずるもので、専有権は優先的使用権に類するものじゃないかと思いますが、このへんの法的解釈については専門家の解説を待ちたいと思います。博物館の資料写真については占有権があるのか業界の掟なのか私にはわかりませんので、ご教示いただけますと助かります。

 いずれにしても、私は科学分野については、一般に言われる「著作権」、「ネットマナー」が通用するとは思いません。 そもそも、現在のウェブ自体が、科学データを公表し知識を共有するために製作されたものであって、ネットを通じて科学データの所有権を主張し、権利の販売をするのは、ウェブ設立の精神に反するものであると考えます。アメリカの常識が世界の常識になったり、日本の法律になったりしないことを望みます。

 日本の学問水準を維持する上での死活問題になりそうに思ったので、熱弁をふるわせていただきました。

_ 玉青 ― 2014年07月31日 07時01分18秒

〇蛍以下さま

仄聞するところ、借金の過払い請求で小金稼ぎとか、どうも最近は弁護士の方も生活が大変みたいで、今度は畑をかえて著作権トラブルを飯の種に…という風にならないといいなあと思います。

〇S.Uさま

熱弁、しっかと読ませていただきました。(^J^)
科学論文と著作権の関係について、ものを言える立場ではありませんが、ネットそのものの基本性格については、今一度ウェブ設立の精神に立ち返って、大らかな風が吹いてほしいものです。

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