結晶海に漕ぎ出す(1) ― 2014年08月05日 22時17分16秒
(昨日のつづき)
「…鉱物といえば結晶だよね。うん、結晶はいいよ。第一、言葉からしてきれいじゃない。キラキラしてる感じっていうか。それにカッチリ硬いイメージ。あと形ね。ほら、マンガに出てくる水晶みたいな、なんていうの、カクカクしてる感じ。
まったく人間離れしてるよね。まあ、人間じゃないから当たり前だけど。
人間なんて、色も冴えないし、グニャグニャしてて、妙に湿っぽい息を吐き出してさ、夏なんて汗臭いし、もうほんと嫌んなっちゃうよね。
それに較べたら鉱物は…うん、やっぱり鉱物はいいね。憧れるね。」
★
…というレベルの人(私)が、鉱物と結晶について改めて知りたいと思いました。そこで、この『ルーチカ図鑑 結晶』を開くと、
TOKOさんの切れ味鋭い挿絵と、
SAYAさんの端正な解説が目に飛び込んできます。
その理科的佳趣は言うもさらなり。しかし、目を凝らして読むと、
【ブラベー格子/Bravais lattice】
単位格子一辺分を平行移動しなくても元の像に重なる場合もある。基準となる点を格子点と呼ぶ。並進対称性を考慮し、7種類の結晶系で、体心に格子点がある場合、面心(6面全部)に格子点がある場合……
うむ、出たか、ブラベー格子。
そしてミラー指数、空間群…と続く辺りが、結晶海の難所で、私はたいていそこで難破することが多かったです。
結晶は美しい。でも、私が声をかけても、結晶学はこれまで一度も振り向いてくれたことがありません。そこに、ものすごくアンビバレントな感情を抱いてきました。しかし、これも縁です。今回はいつもより、もう少し先まで船を進めることにします。
★
持論ですが、こういうときは守りに入るとダメです。
自分から攻め込んだ方が、結果的に良いことが多いようです。
「え、結晶? 結晶っていったら、分子や原子が、こうズラリと規則正しく並んだ物質のことでしょ?そんなもん、別に難しくも何ともないじゃない。」
…というぐらいの気持ちでいた方が良いのです。
(虚勢を張りつつ、この項つづく)
最近のコメント