結晶海に漕ぎ出す(4)…ミクロとマクロ2014年08月10日 13時39分37秒

(あれから2日後)

よお、どうだい。結晶の方ははかどってる?

やあ。まあ、なかなか難しいね。でもさ、さまざまな結晶のあり様は、結局、分子・原子の配列の規則性に基づいて決まるっていうのは確かだし、そこが肝だと改めて思ったよ。…ところで、キミはこの本読んだことあるかい?

(堀秀道(著)『楽しい鉱物学』、草思社、1990.※その後新装版が出ています。)

いや。でも、堀秀道さんて、ときどき「鑑定団」に出てくる人だろ?

うん。この本の序文は、日本に鉱物趣味が定着しつつあった平成初めの世相を物語る資料として、すこぶる興味深いけれど、それはさておき、堀さんは本の中でこんなことを書いてる。

「生物では、構造の単位としてまず細胞があり、その下に分子があり、究極的に原子やイオンに至るが、鉱物では中間的なものがなく、一足とびに原子やイオンになってしまう。」(p.142)

「世の中はすべて原子(イオン)からできている。しかし、人間は原子(イオン)を見ることはできない。それはあまりにも究極微の世界だ。ただ、鉱物の結晶を手に持つとき、人間は原子(イオン)の世界に直接触れることができる。結晶は原子(イオン)の世界の出来事がそのまま肉眼化したものなのだ。/人間が鉱物の結晶の美しさに打たれるということは、宇宙の根元である原子(イオン)の世界に触れた感動ではないだろうか。」(p.164)

「結晶は目に見える原子の世界」ってわけか。なんとなく分かる気がするな。

だろう?結晶の話で、これまでボクがすごく分かりにくかったのはね―。

うん。

最初は、結晶面の角度がどうとか、対称軸がどうとか、「あ、これは目の前にある具体的な結晶の話をしてるんだな」と思って聞いているじゃない。

ふむふむ。

でも、それがいつの間にか、単位格子がどうとか、イオンの配位数がどうとか、ミクロの話にスライドしてて、「あれ?いったい自分は今どこにいるのかな?」って、いつも迷っちゃうんだ。しかも、そこに出てくる挿絵が、どっちも似たような3次元座標の図だったりするもんだから、なおさら混乱しちゃってね。


ほら、このウィキペディアの「結晶構造」の項目に出てくる説明図もそうさ。結晶系の方は肉眼レベルの話だろ。でも、それがミクロの世界のブラベー格子の絵と、何の説明もなく、当たり前のように並んでいて、面喰っちゃうわけさ。

なるほど、それで堀さんの一文ってわけか。

そういうこと。結晶は生物と違って、肉眼的な世界と極微の世界がダイレクトにつながってる…そう知ってみれば、そんなに戸惑う必要もなかったなあと思って。そして、いっそう結晶を興味深く思うようになったよ。

うん、結晶系とブラベー格子の対応にしてもね、これはこうあるべきなんだよ。結晶の面や軸なんていうのは、まさに「原子(イオン)の世界の出来事がそのまま肉眼化したもの」なんだから。

それにしても、人間は、細胞、個体、社会、みんなてんでばらばらの論理で動いているのに、鉱物界は律儀だね。修身・斉家・治国・平天下を地で行く感じがするな。

分かった、分かった。まあ、落ち着けよ。
…ところでブラベー格子って、よく聞くけど、いったい何だい?

そうだ、そのことがあったね。

(この項つづく)

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