(続) リトロー著 『天界の驚異』2014年09月13日 10時31分23秒

テンモンコガニークな本ということで、前回、リトローの『天界の驚異(Wunder des Himmels)』をご紹介しました。

この本は、日本でいえば天保時代の1830年代に初版が出て、戦後の月ロケットの時代まで繰り返し版を重ねた超ロングセラーです。しかも、別に古典が復刻されたわけではなくて、著者のリトロー(Joseph Johann von Littrow、1781-1840)の死後も、後世の学者がたびびたび改訂を施し、内容をアップデートしながら、常に現役の天文学入門書として販売されたという、書籍としてはこの上なく幸せな扱いを受けた本です。

前回のは1886年版でしたが、下は四半世紀経った1910年版。


装丁がこれまた凝っているので、無駄とは思いましたが、つい食指が動きました。
なお、タイトルをよく見ると『Die Wunder …』と、頭に定冠詞の「Die」が加わっていますが、本としては同じものです。


相変わらず分厚い本ですが、ページ数は781頁と、1886年版に比べてかなりスリムになりました。


写真図版も登場し、時代の変化を感じます。
中身も図版が一挙に増えて、パッと見同じ本には見えませんが、全体の章立ては旧来のものをほぼ踏襲しています。


表紙細見。文字もイラストも、捺しをかけて凹凸がくっきり出ているのが良い雰囲気。


この本は巻末に折り込み付録が付いていて、これを切り抜いてボードに貼ると、直径52cmという巨大な星座早見が出来る趣向です。
勿体ないのでやりませんが、でも状況が許せば作ってみたいですね。

コメント

_ S.U ― 2014年09月14日 08時18分44秒

>、常に現役の天文学入門書として販売されたという、書籍としてはこの上なく幸せな扱いを受けた本

 幸運もあったのでしょうが、書物にスタンダードとなるだけの内容があったのでしょう。

 そして、さらにリトローさんの名は、これはたまたまですが、1972年のアポロの最終月着陸でまた有名になったので、ご存命中は知りませんが、後世においてはほんとに幸せな人ですね。

_ 玉青 ― 2014年09月14日 15時17分13秒

フランスだと、例のフラマリオンの『アストロノミー・ポピュレール』が、戦後も改訂・重版を繰り返しており、最後の方は原著と似ても似つかぬものになっていましたが、そういう、その分野の人にとってはいわば「神様本」のような存在が、ときどきありますね。
日本だと、天文分野は思い浮かびませんが、たとえば牧野植物図鑑などは、マイナーチェンジを繰り返しながら、この先も長く現役であり続けることでしょうね。

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