壜詰め標本一本勝負2014年10月31日 20時19分20秒

例の理科室放出品の壜の中身は実に雑多で、その分野も地学あり、化学あり、そしてまた生物あり。他の壜も見てみます。


この壜の中には、細長い葉っぱと、変わった形の実が入っています。


ラベルは白紙のまま。


見慣れない実だなあ…と、最初は何だか分かりませんでした。でも、いろいろ調べたら、これはユーカリの実だそうです。葉っぱも同じくユーカリです。

   ★

ユーカリは、今でもそうあちこちに植わっている木ではありませんし、まして戦前にあっては、いっそう珍しい存在で、だからこそ女学校の先生も、わざわざビン詰めにしたのだろう…と、最初は思いました。

でも、下のページを見たら「日本には、明治10年ころに輸入された。大正の中ころには、ユーカリの木を植えると、土壌中の湿気がとれて大気は清浄され、材はパルプにするということから栽培ブームになった。」とあって、へええと思いました。大正時代に、ユーカリブームがあったんですね。

ユーカリ、ユーカリノキ: 薬用植物一覧表
 
http://www.e-yakusou.com/sou02/soumm236.htm

ユーカリのことをさらに知るために、古い植物図鑑を引いてみました。

(村越三千男著、『内外植物原色大図鑑』第4巻、昭和8年(1933)より)

(同)

ユーカリは単一の種を指すのではなく、「松」とか「桜」というのと同じように、いろいろな種類を含むグループ名ですが、この壜に入っているのは、上で図示されている「ユウカリノキ Eucalyptus Globulus」という、いちばんポピュラーな種類のようです。

ユーカリといえばコアラ…という連想が働きますが、当時はそのことへの言及は皆無。
主たる用途は、薬用、建築材、そして「地中の水分を吸収すること甚だしきを以て、病原に富める湿地を乾燥し、漸次健康地となすの理由により広く暖地に栽培せらる」ことが書かれています。

最後の用途については、ウィキペディアに書かれている「根を非常に深くまで伸ばし地下水を吸い上げる力が強いので〔…〕砂漠化した地域の緑化に使われて成功」云々というのと、何だか正反対のような気もしますが、でも両立するのかもしれません(湿地に植えても、砂漠に植えても、結局最後は「わりと乾燥した緑地」になる、ということかも)。



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