切手になったティコ・ブラーエ2014年11月16日 12時50分50秒

11月4日の記事(http://mononoke.asablo.jp/blog/2014/11/04/7482514)で、ティコ・ブラーエのことを取り上げましたが、あの後でこんな切手を見つけました。フヴェン島にあった、ティコの観測施設ウラニボルグ(天空の城)」をデザインしたものです。


「え?同じもの?」と思いましたが、よく見たら、左はデンマークの切手で、右はスウェーデンの切手。フヴェン島は、両国を隔てる、エーレスンド海峡に浮かぶ小島で、ティコの時代はデンマーク領でしたが、17世紀半ばにスウェーデン領になったという歴史があります。そんなわけで、ティコの生誕450年を翌年に控えた1995年、両国が共同で発行したのが、この記念切手なのでした。

(中央のバルーンがフヴェン島(現・ヴェン島)の位置)

フヴェン島の領有権が移ったのは、そもそも両国の戦争(北方戦争)の結果によるものですが、こうして時を隔てて仲良く切手を出すというのは、実にうるわしい光景です。(ココデ我ガ極東ヲ顧ミルニ、サテ如何?)

ティコ・ブラーエはデンマーク貴族の血筋でしたから、ティコその人については、当然デンマーク側の慶祝意識が強く、1946年には生誕400年を、


1973年には超新星(「ティコの新星」)発見400周年を祝う切手が、それぞれデンマークで発行されました。


とはいえ、彼には国家への帰属意識がどれだけあったのか?

彼の「天空の城」は、ウラニア女神に謁見する場であり、彼は観測の際、常に最上等の衣服を身に着けたといいます。後にデンマーク王の後ろ盾を失った彼は、フヴェン島を離れ、残りの人生を、神聖ローマ帝国ルドルフ2世治下のプラハで過ごしましたが、彼のアイデンティティは、結局最後までウラニアに仕える「天空の民」にあったのでは…という気が何となくします(本当のところは分かりませんが)。