天文古玩の幼年時代(4)2014年12月23日 19時15分37秒

いろいろ慌ただしいです。
まあ、これが師走の正しいありかたなのでしょう。

   ★

さて、ブログを始めた頃の気分を思い出すために、この一文を書き始めました。
そして、その目的は早くも達せられました。くだくだしく書くまでもなく、あのダンキンの『真夜中の空』に流れる詩情こそが、それだと思い出したからです。

とは言え、それはごく個人的な経験なので、他の方には伝わりにくいと思います。
このページの左側にあるブログ紹介には、「リリカルな郷愁の天文趣味の世界」というフレーズがありますが、天文古玩の基調音は、リリシズムとノスタルジーだ…といえば、多少は分かりやすくなるでしょうか。

   ★

たとえば、本棚から気まぐれに抜き出した1冊の絵本。


■Arthur Draper(文)、Barry Bart(絵)
  WONDERS of the HEAVENS.
  Random House (New York), 1940.  28p.

ピッツバーグのブール・プラネタリウムの館長さんが書いた子供向けの本です。


望遠鏡を仰ぎ見る子供たちの目の輝き。
1940年当時のアメリカの子供たちが抱いた、はるかな宇宙への夢。
『真夜中の空』とは、国柄も、時代背景もずいぶん違いますが、それでも天文古玩の基調音は、ここにも静かに流れています。


空へと視線を誘導する、明るく伸びやかな虹。



宇宙を旅する未来のロケットと、柔らかい色調のプラネット。


そして夜空を悠々と横切る銀河。

   ★

この本は特に名著でもない、ごく普通の絵本ですが、その感触を何と言えばいいのでしょう? やっぱり郷愁であり、リリシズムであり、そして夢であり、憧れでしょうか。

(「11歳のお誕生日に。お母さんより。」)

そして、それが人としての温かい思い出と結びつくとき、幼年時代は黄金時代になるのだと思います。天文古玩の幼年時代もまた然り―。