年末述懐2014年12月30日 11時44分46秒

ときどきネットオークションで「オッ」と思うことがあります。


たとえば上のようなアンティークの天球儀が売りに出ていて、お値段は…と見ると、これが日本円にして700円ちょっと。一瞬「?」と思いますが、上の商品は、実は「天球儀の絵葉書」だったというのが話のオチ。でも、ここには笑い話で済まない真実があります。

それはディスプレイの前の人にとっては、「本物の天球儀の画像」も、「天球儀の画像の画像」も、区別が付かないということです。

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昔は…と言っても、わずか数年前のことですが、古い星座早見にしても、天文古書にしても、どんなささやかな画像や記述であっても、そこには情報としての意味がありました。

しかし、Googleの画像検索の精度が上がり、またPinterest のように、お気に入りの画像を収集して公開するサービスが盛んになるにつれて、天文古玩周りのマイナーな品でも、とびきり美しい画像や、奇妙で不思議な画像を、今や簡単に見ることができるようになりました。(もちろん情報だけではなく、具体的なモノだって、当時は珍しかったのに、今ではありふれたものになった例はたくさんあります。)

このブログにしても、当初は「物珍しさ」から立ち寄ってくださる方が多かったと思います。しかし、今はもうそういう時代ではありません。

もちろん、そうした情報の相対的価値(あるいは希少性)の低下は、情報が万人に開かれた帰結ですから、基本的に良いことだと思います。私自身、その恩恵をどれぐらい受けているか分かりません。

ただ、ブログの書き手の立場からすると、通り一遍の品を、見栄えの良くない画像と共に記事で取り上げることに、抵抗感と言うか、「今さら感」があって、記事が書きにくくなっているのも確かです。平たく言えば、「天文古玩」の存在意義は今や急速に薄れつつあり、書き手の自己満足だけが虚しく残るのみ…という状況になっているのが、客観的事実でしょう。

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似たような話題は、以前、鉱物趣味に関してつぶやいたことがあります。
http://mononoke.asablo.jp/blog/2013/06/01/6830739

そこでは、鉱物趣味が、趣味としてポピュラーになったために、情報の受け手(そして送り手自身)の要求水準が上がり、かえってサイト運営が難しくなっているのではないか…という所感を述べました。そして、「ひるがえって天文古玩趣味はどうか。こちらは一貫してマイナーかつニッチ的趣味なので、幸か不幸か「メジャー化に伴う苦労」とは無縁」とも書き付けています。

でも、それもかなり怪しくなってきた感がなきにしもあらず。

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ブログ10年目に突入する来年は、さてどうなるかなあ…と、特に良い思案もないですが、少し真剣に考えないといけないかもしれませんね。

コメント

_ zabiena ― 2014年12月30日 15時00分15秒

先日、同じようなブロガーとしての悩み(私程度の貧弱なコレクションを披露したところで、もっといい標本をもっといい画質でもっとセンス良く披露しているところはほかに沢山ある…と)を、知人に漏らしたところ、「コレクションブログの存在意義はそういうところにはない」と断じられ、目の覚めた経験をしました。
知人曰く「誰もがあなたのように、ほしいもの、好きなものを実際に買い集めているわけではない。
断捨離流行りのこのご時世、いくら情報があふれていようと、物を買って増やすことに躊躇する種類の人間は多くいて、私もその一人だが、そういう人間からすれば躊躇なくモノに埋もれて暮らしている人間の暮らしを見るのは興味深く、楽しいものだ。
ネットの普及は裾野の拡大をもたらし、今や全く鉱物や博物に興味のなかった人間も、TwitterやインスタグラムなどのSNSからもあなたのブログを知り、流れてきているのだから、需要は十分にある」と…。
なんだか、褒められているのかバカにされているのか微妙だとは思いましたが、なるほど、モノの質や情報の精度よりも、蒐集癖に振り回されて暮らす私の生活自体が観察対象だったか、と(笑)
玉青さんのコレクションの充実度や記事の精度はもちろん、私などとは比べ物にならないくらい素晴らしいものですので、私ごときのこんな例を出すのも不遜ではありますが、ここまで蒐集を極めていらっしゃる方もそうおりますまい、と思うにつけ、玉青さんには個人的に、このまま我が道を貫いていただきたいと密かに願っております…

どうぞよいお年を。

_ 玉青 ― 2014年12月31日 08時24分13秒

嬉しいコメントをありがとうございます。
なるほど、モノ自体よりも、蒐集癖のある人間のライフスタイルとか、(一寸カッコよくいえば)生き様みたいなものに、他の人は興味を持たれるかもしれないということですね。その発想はなかったので、まさに目から鱗が落ちました。そうとなれば、どんどん生き様…というか生き恥(笑)を晒してみようじゃないかという気にもなります。

…というわけで、来年もお目汚しになりますが、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
年明け、当地でお目にかかるのを楽しみにしております。zabienaさんも良いお年を。

_ S.U ― 2014年12月31日 15時51分40秒

 700円の天球儀でなくて残念!

 それでは来年もすばらしいコレクションと、(これがより重要なのですが)それにまつわるご評論と尾ひれ・脱線話をお届け下さい。
 モノ自体の内容はそれほど重要でない、とのご結論にもなったようですので、私もはるかに劣る自分のささやかな収集物を我らが同好会誌で紹介してみようかな、という良からぬ考えが来年に向けて浮かびました。

 それでは、よいお年をお迎えください。

_ 玉青 ― 2014年12月31日 17時05分31秒

あはは、まこと残念です。
まあ、戦前なら700円で何とかいけたかもしれませんが…

ときにS.Uさんの秘蔵の品々が拝見できるとは!
思えばS.Uさんとも長いお付き合いになりますが、S.Uさんのコレクションを直に目にするのは初めてですね。これは2015年に向けて大きな楽しみができました。ご紹介、ぜひよろしくお願いいたします。

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