博物蒐集家の贈り物(2)…燃える世界 ― 2015年02月03日 06時47分40秒
dubheさんからは、激しく燃え、沸き立ち、煙を噴き上げる、太陽の手彩色銅版画を贈っていただきました。
(善き哉、博物学の佳趣…)
原図は綺想の科学者、アタナシウス・キルヒャー(1602-80)の手になるもので、彼の著した『地下世界(Mundus subterraneus)』(1665、1678)に収められています。
一見して強烈な印象を与える図柄で、その訴求力から、後世繰り返しコピーされたようです(日本でも、司馬江漢が「太陽真形図」と称してコピーしています)。そのため、いただいた版画の直接の出所は不明ですが、おそらく1700年代のものの由。
見れば見るほどすさまじい絵です。
でも、太陽が高熱を発する球体であり、地球とは別の世界がそこに広がっていると見抜いた人が、その知識を図示するとしたら、いったい他にどんな絵が描けただろうか…とも思います。
高温を発する現象として、物質の燃焼しか知らなければ(かなり近い時代までそうでした)、太陽では目もくらむほどの火柱が立ち、絶えず煙が上がっていると考えても不思議ではありません。
21世紀を生きる我々だって、光球上にうねる巨大なプロミネンスの写真を見て、漠然と「炎のようなもの」と思っているのではないでしょうか。人間の心の中では、太陽は依然真っ赤に燃えており、このキルヒャーの絵こそ、より「心の真実」に適う姿のような気がします。
そして、Hαフィルターを用いた最近の太陽写真は、再びキルヒャーの絵に接近してるようでもあります。
人が純粋な研究目的にとどまらず、こういう画像をついつい撮りたくなるのは、やっぱり上のような理由が伏在しているからだ…と睨んでいます。
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