言技(ことわざ)一本2015年02月11日 18時04分34秒

明石市のおかげで、時間旅行の許可は得られたのですが、残る問題は、渡航手段をどうするかですね。とりあえず、1日に24時間進む船のチケットは確保しましたが…

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思うところあって、明石市提供の「時に関することわざ」のつづき。

「上り一日 下り一時」  一日がかりの長い上り坂も、下る時はわずかな時間しかかからない。ものごとの建設は時間がかかるが、破壊はたやすいということ。

「千日の萱(かや)を一日に焼く」  屋根を葺くのに使う萱を、千日かけて刈り集めたのに、たった一日で燃やしてしまうこと。永年築いた実績を一瞬のうちになくすことのたとえ。

こういう類似したことわざが複数あるのは、人々が長い年月の間に、繰り返しその実例を目にし、心に刻んで来たからでしょう。現政権を見ていて、私もまたそのことを心に刻んでいます。

時間旅行は楽しいばかりではありませんね。
旅は憂きもの、時には心の痛む光景も目にしなければなりません。

(こういう物言いに対して、「旅人を気取って、傍観者でいるだけではいけないよ」と、苦言を呈される方もいらっしゃると思います。まさにその通りだと思います。まあ、旅人がよんどころなく騒動に巻き込まれて…というのが、ドラマの定石ですから、私にしたってどうなるかは予想もできません。)

カテゴリー縦覧…天文古書編:ニコル著『宇宙の構造』(1)2015年02月11日 18時06分56秒

ブログのネタはなかなか尽きませんが、どうも普通に書いていると、日常的な小ネタに偏りがちなので、少し意識的に話題に枠をはめたほうがいいのではないかと思いました。で、一番単純な方法として、左欄に挙げられた記事のカテゴリーを順番に取り上げて、これまで登場の機会がなかった品に光を当ててみようと思います。

まずは普通に天文古書から。

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John Pringle Nichol
 The Architecture of the Heavens.『宇宙の構造』
 Hippolyte Bailliere (London), 1851 (第9版)
 八折版、300p.

ジョン・プリングル・二コル(1804-1859)は、スコットランドの教育家・天文家。天文家としての彼は、研究者であるよりも、まず啓発家であり、その方面で同時代に影響力がありました。

この『The Architecture of the Heavens』もその一冊です。(なお、彼には、『Views of the Architecture of the Heavens』という似た題名の著作もありますが、内容も体裁も異なるので、購入の際には注意が必要です。)


この本は、その図版をぜひご覧いただきたいのですが、その前に、装丁の魅力にも触れておきます。




見事な空押しの革表紙に三方金、鮮やかなマーブルの見返しという造本は、相当凝っています。


これほど装丁にお金をかけたのは、この本が著者ニコルから親しく献呈されたものだからと想像します(献じられた人の名前は William Beaumont Esq. と読めますが、何者かは不明)。


その後、何人もの人の手を経て、最後はダラムの古書店から私の元にやってきました。


この著作は19世紀最大の巨人望遠鏡を建造した、アイルランドのロス伯爵(ウィリアム・パーソンズ)の夫人に捧げられています。ロス伯爵も当時はまだ存命ですが、あえて伯爵夫人に捧げたのは、それが往時の紳士のたしなみなのでしょう。

(この項つづく)