カテゴリー縦覧…星図編:古星図を眺める(2)2015年02月16日 20時26分10秒

フランスのル・ルージュの星図のつづき。

(北天の一部)

(南天の一部)

小さな画面に居並ぶ、小さな小さな星座たち。
あどけない表情が何ともかわいらしい。

まあ、昨日の記事に出てきた、星図研究家のWarnerに言わせれば、「A crude copy of the maps of La Hire.(ラ・イール星図の粗野なコピー)」ということになるのですが、オリジナルのラ・イール版は、直径が42cmもある大判星図なのに対し、このル・ルージュ版は、周囲の目盛り環を入れても直径10.5cmしかないのですから、表現が簡略化されるのは止むを得ません。

ちなみに、半球図を描く場合、現代の星図だと、天の赤道を基準に北天・南天を分割しますが、古い星図では黄道(1年かけて太陽が天球上を一周する通り道)を基準にする場合が多く、この星図もそうなっています。

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昨日、この星図に格別特徴はないと書きました。

でも、周囲を飾る豆天体図に目を凝らすと、これがなかなか興味深いです。いずれも直径が2.5~2.8cmと、ちょうど500円玉ぐらいの大きさしかないんですが、たとえば太陽の図を見ると、「キルヒャー神父による太陽」と書かれています。


これぞ先日(2月3日)登場した、アタナシウス・キルヒャーの恐るべき太陽図(↓)の約100年後の子孫なのでした。

(画像再掲)

何だかほとんど原形をとどめていないし、Warner に言わせれば、これまた「粗野」の一言で片付けられてしまうでしょうが、何て言うんですか、やっぱり「かわいい」としか言いようのない味わいがあります。

そして月はといえば…


ガリレオのスケッチを元にした、これまた不思議な絵になっていますし、


木星(↑)や土星(↓)は、パリ天文台の初代台長・ジョヴァンニ・カッシーニが公にした図が元絵になっています。


正確さはさておき、こういう歴史的図像―ル・ルージュ当時から見ても、100年ないし150年も昔の絵ですから、相当古めかしい絵です―を切り貼りして並べて見せることは、当時の一般の嗜好に叶うものであり、さらに250年経った今これを眺めると、1枚の版画の内に、天文学の歩みが一層ギュッと凝縮して感じられます。

「画面全体にあふれる愛らしさ」と並んで、そうした「歴史絵巻」的面白さも、この星図の見所だと思います。