土星キャラ立ち史(その4) ― 2015年03月19日 06時51分40秒
いわゆるポピュラー・アストロノミーの本、つまり天文学の専門書ではなく、児童や一般向けに書かれた入門書類は、これまでいろいろ買いました。ほぼ積ん読状態とはいえ、もしその気になれば、ある時代にどんな知識が一般に流通していたのか、覗き見ることぐらいはできるはず…と、当人は踏んでいます。
でも、今気になっている「土星の擬人化の歴史」のようなテーマには、それも無力です。いかに一般向けとはいえ、一応は天文学の本ですから、さすがに帽子をかぶった土星は登場しないからです。こういうのは、新聞や雑誌とか、よりエフェメラルな資料に当らないとダメっぽいです(文学作品への登場は、もうちょっと調べようがあるかもしれません)。
というわけで、調べるのはかなり難しそうですが、例えば…ということで、パッと思いついたものを挙げておきます。
(以前登場したハレー彗星の本 http://mononoke.asablo.jp/blog/2009/05/25/4323377 から勝手借用)
1910年のハレー彗星回帰を当て込んだ絵葉書の隅に登場する土星2態。
テーマがテーマなので、ここでは土星も脇役ですが、下の絵葉書を見ると、ハレー彗星の陰で「Mir ist der Sternschnuppe ! ボクも流れ星だよ!」と、盛んにアピールをしています(ドイツ語が×なので、このセリフの意味が今いち分からず)。
★
下は1900年に発行されたStollwerck社(ドイツ)のチョコカード。
(6枚で1つのシリーズを構成しています)
コミカルに擬人化された月や太陽や彗星にまじって、土星がさかんにプカプカやっています。この土星はいかにも人を煙に巻きそうな、ヒネた顔つきですが、土星だけに輪を作るのは上手いようです。
★
1900年は19世紀最後の年。土星の擬人化が、19世紀のもっと早期にさかのぼることは、ほぼ確実でしょうが、今はこれ以上材料がありません(もちろん、ここで言う擬人化には、ギリシャ神話由来のサトゥルヌス像のようなものは含みません)。
結局、いつものように答は何一つ分からぬまま、問題提起だけで終わってしまいますが(嗚呼…)、類例は引き続き探してみます。
(この項いったん中断)
コメント
_ S.U ― 2015年03月19日 19時11分53秒
_ Ha ― 2015年03月20日 03時07分00秒
おおっ! 『HALLEY'S COMET MEMORIES OF 1910』ですか。
これはまた懐かしい…。もう30年になるんですね。
30年間、本棚に立てたままで、存在自体をすっかり忘れていました。(汗)
久しぶりに見返してみましたが、P.68に掲載されている銅版画を初めて見たときの衝撃が甦ってきました。
いま見ても、このほうき星の顔は凄い!と思います。^^;
太陽と月については、中世の木版画のころから人間のような顔が描かれるのが普通ですが、土星や彗星の擬人化はかなり新しいでしょうね。
それを最初に行ったのは誰なのか? 確かに興味深いテーマですね。
これはまた懐かしい…。もう30年になるんですね。
30年間、本棚に立てたままで、存在自体をすっかり忘れていました。(汗)
久しぶりに見返してみましたが、P.68に掲載されている銅版画を初めて見たときの衝撃が甦ってきました。
いま見ても、このほうき星の顔は凄い!と思います。^^;
太陽と月については、中世の木版画のころから人間のような顔が描かれるのが普通ですが、土星や彗星の擬人化はかなり新しいでしょうね。
それを最初に行ったのは誰なのか? 確かに興味深いテーマですね。
_ ao ― 2015年03月20日 18時20分36秒
ずっと昔にコメントしたことがあります。ご無沙汰しております。
>Mir ist der Stern schnuppe !
この意味ですが、S.U.さんが書かれている意味の他にも言葉遊びが隠されていると思います。
「schnuppe」というのは述語的に用いられて「どうでもよい、全く重要でない」という意味がありますので、「ボクにとってその星(Stern)はどうでもよい」ということになるかと。
土星のプライドが仄見えて微笑ましいです。
>Mir ist der Stern schnuppe !
この意味ですが、S.U.さんが書かれている意味の他にも言葉遊びが隠されていると思います。
「schnuppe」というのは述語的に用いられて「どうでもよい、全く重要でない」という意味がありますので、「ボクにとってその星(Stern)はどうでもよい」ということになるかと。
土星のプライドが仄見えて微笑ましいです。
_ 玉青 ― 2015年03月20日 20時31分11秒
○S.Uさま、aoさま
ご教示ありがとうございます。おふたりの解説を伺い、やっと意味が分かりました。
「ふん、流れ星風情が!」みたいなニュアンスでしょうか。
いずれにしても、土星がハレー彗星に対抗心を燃やしているのは確かなようですね。
天界の人気者同士、そこには人間の窺い知れない確執がいろいろあるのでしょう。(^J^)
○Haさま
げげ、Haさんはリアルタイムで購入されていたのですね!
それは筋金入り。私は全然知りませんでした。
えーと68頁はと……あはは、なるほどこれは衝撃ですね。
土星の擬人化問題については、引き続き情報募集中ですので、どうぞよろしくお願いします。
ご教示ありがとうございます。おふたりの解説を伺い、やっと意味が分かりました。
「ふん、流れ星風情が!」みたいなニュアンスでしょうか。
いずれにしても、土星がハレー彗星に対抗心を燃やしているのは確かなようですね。
天界の人気者同士、そこには人間の窺い知れない確執がいろいろあるのでしょう。(^J^)
○Haさま
げげ、Haさんはリアルタイムで購入されていたのですね!
それは筋金入り。私は全然知りませんでした。
えーと68頁はと……あはは、なるほどこれは衝撃ですね。
土星の擬人化問題については、引き続き情報募集中ですので、どうぞよろしくお願いします。
_ S.U ― 2015年03月21日 17時29分25秒
>朧月
もう少したてば夜桜の季節ですね。生暖かくなった夜の風情は格別です。
「春宵一刻値千金」の感覚は、西洋の春でもあるのでしょうか。
もう少したてば夜桜の季節ですね。生暖かくなった夜の風情は格別です。
「春宵一刻値千金」の感覚は、西洋の春でもあるのでしょうか。
_ S.U ― 2015年03月21日 20時36分31秒
珍しいコメントのスレ間違いをしてしまいました。
上は、「エディンバラ」のほうへのコメントとご理解くださるようお願いいたします。
上は、「エディンバラ」のほうへのコメントとご理解くださるようお願いいたします。
_ 玉青 ― 2015年03月21日 21時36分38秒
あは、これはS.U大人も些か酔眼の態とお見受けしました。(笑)
春の喜びは、中緯度以上の国々に共通するものと思いますが、その賞するところは、所によって自ずと異なるかもしれませんね。イギリスでは陽光が明るく山査子の花を照らす様を、中国では柔らかな雨が新緑を濡らす様を、古人は繰り返し詩に詠みましたが(何となくそんな気がします)、日本では朧夜の艶な風情がそれに当るのでしょう。
辞書を見ると、朧月夜には「spring night with a hazy moon」という長ったらしい訳が当てられていますが、この表現をネイティブはほとんど使わず(検索しても用例が出てきません)、日本の古典を英訳するとき専用の観があるので、まあ説明すれば、共感はしてもらえるかもしれませんけれど、英米の人が本来持っている「美の目録」にはない概念のように思います。
…と、こんなことをクダクダしく書くのは野暮の極みで、英米の人にしたって、独仏の人にしたって、微かな花の匂いが漂う中、朧月の下に誘い出して、グイと酌み交わせば、その魅力はただちに伝わるに相違ありません。
そういえば、当地では早々と桜の開花宣言が出ました。
春の喜びは、中緯度以上の国々に共通するものと思いますが、その賞するところは、所によって自ずと異なるかもしれませんね。イギリスでは陽光が明るく山査子の花を照らす様を、中国では柔らかな雨が新緑を濡らす様を、古人は繰り返し詩に詠みましたが(何となくそんな気がします)、日本では朧夜の艶な風情がそれに当るのでしょう。
辞書を見ると、朧月夜には「spring night with a hazy moon」という長ったらしい訳が当てられていますが、この表現をネイティブはほとんど使わず(検索しても用例が出てきません)、日本の古典を英訳するとき専用の観があるので、まあ説明すれば、共感はしてもらえるかもしれませんけれど、英米の人が本来持っている「美の目録」にはない概念のように思います。
…と、こんなことをクダクダしく書くのは野暮の極みで、英米の人にしたって、独仏の人にしたって、微かな花の匂いが漂う中、朧月の下に誘い出して、グイと酌み交わせば、その魅力はただちに伝わるに相違ありません。
そういえば、当地では早々と桜の開花宣言が出ました。
_ S.U ― 2015年03月22日 22時57分16秒
西洋の人に日本に来ていただいて春の宵に一緒に外で一杯やっても、私が西洋まで出張って行ってあちらの春の宵に一杯やらしてもらっても、その良さに大きな違いは無いでしょうね。
そう考えると、もう細かいぐじゃぐじゃしたことどうでもええような気がしてきますわ。
そう考えると、もう細かいぐじゃぐじゃしたことどうでもええような気がしてきますわ。
_ 玉青 ― 2015年03月23日 06時48分10秒
よく考えたら、私は春夏秋冬いずれの宵でも、一杯傾けさえすれば等しく魅力を感じる人間なので、朧夜の魅力を語る資格はないですねえ。(笑)
酒なくて何の己が桜かな
酒なくて何の己が桜かな
_ S.U ― 2015年03月23日 19時13分34秒
夏秋冬も酒や春なる
_ Ha ― 2015年03月24日 23時23分04秒
>げげ、Haさんはリアルタイムで購入されていたのですね!
>それは筋金入り。私は全然知りませんでした。
いえいえ、私など、玉青さんはじめ常連コメンテイターの皆さまの足元にも及びません。
その証拠に、これまでその存在をすっかり忘れていた次第で…(汗)
この本はたまたま『スカイ&テレスコープ』誌の書評だか広告だかで見かけて、丸善に頼んで取り寄せてもらいました。
その後、丸善の洋書コーナーでしばらく見かけましたので、日本にもいくらかは入ってきていると思います。
ところで、「P.68に掲載されている銅版画」と言うだけでは、このブログをご覧になっている多くの皆さまに失礼ですので、以下に画像をアップしました。興味のある方はご覧ください。(銅版ではなく、木口木版でした)
http://www.geocities.jp/prograph_sx/comet/comet.html
ついでながら、『天雅彦草紙』(あめのわかひこのそうし)の「ほうきぼし」もアップしておきました。
箒を持っているところが笑えます。^^
>それは筋金入り。私は全然知りませんでした。
いえいえ、私など、玉青さんはじめ常連コメンテイターの皆さまの足元にも及びません。
その証拠に、これまでその存在をすっかり忘れていた次第で…(汗)
この本はたまたま『スカイ&テレスコープ』誌の書評だか広告だかで見かけて、丸善に頼んで取り寄せてもらいました。
その後、丸善の洋書コーナーでしばらく見かけましたので、日本にもいくらかは入ってきていると思います。
ところで、「P.68に掲載されている銅版画」と言うだけでは、このブログをご覧になっている多くの皆さまに失礼ですので、以下に画像をアップしました。興味のある方はご覧ください。(銅版ではなく、木口木版でした)
http://www.geocities.jp/prograph_sx/comet/comet.html
ついでながら、『天雅彦草紙』(あめのわかひこのそうし)の「ほうきぼし」もアップしておきました。
箒を持っているところが笑えます。^^
_ 玉青 ― 2015年03月25日 21時02分45秒
画像のアップ、ありがとうございます。
『天雅彦草紙』もいいですね。箒を持ったほうき星も、色白の明星も、仲良し7人組のすばるも、みな何と愛らしいのでしょう。これはもっともっと人口に膾炙してほしいです。星たちが皆童形の稚児姿なんて、カワイイ流行りの昨今、見る人が見たら悶絶するんじゃないでしょうか。
(ツタの葉と懐かしいアイテムにも再会できて、嬉しかったです^J^)
『天雅彦草紙』もいいですね。箒を持ったほうき星も、色白の明星も、仲良し7人組のすばるも、みな何と愛らしいのでしょう。これはもっともっと人口に膾炙してほしいです。星たちが皆童形の稚児姿なんて、カワイイ流行りの昨今、見る人が見たら悶絶するんじゃないでしょうか。
(ツタの葉と懐かしいアイテムにも再会できて、嬉しかったです^J^)
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>Mir ist der Sternschnuppe !
これは、Toi--Amour に似た感じの文法破り??の難題ですね。
Mirが3格なので、"to me"のように訳して、 「ボク(土星)にとって、(ハレー彗星)は流れ星だよ!」 ではないでしょうか。
ちなみに、私はフランス語は10語レベルですが、ドイツ語は100語レベルですから、今回は前回の10倍くらい確かだと思います(笑)。