世界は光り、脈動する…小さな銀河模型2015年05月10日 06時49分30秒

目に見える現象世界はまことに複雑でとらえどころがないが、その背後には必ずや基本となる要素があり、複雑に見える現象も、そうした基本要素の相互作用によって説明できるにちがいない―。

これは多くの文化圏で生まれた考え方で、科学と魔術が未分化な時代から、その精緻な理論化に向けて、人々は思索と観察を重ねてきました。例えば古代ギリシャでは、「地・水・火・風」の四大を、インドではさらに「空」を加えて五大を想定しました。一方、中国で生まれたのは「木・火・土・金・水」の五行説です。

五行説では各要素に色を配当し、「青・赤・黄・白・黒」の5色とします。
仏教の場合、五大の各要素に色を当てはめたわけではありませんが、一種の吉祥色として、やはり「五色(ごしき)」を挙げ、そのカラーバリエーションは五行と同じです(過去のどこかで混交が起こった可能性もありますが、まあ通文化的に基本色なのかもしれません)。

日本では「青・黒」を「紫・緑」に差し替えることが多く、「紫・赤・黄・白・緑」のカラーパターンが、お寺でも神社でもやたらと目につきます。鯉のぼりの吹流しもそうですね。要は世界を象徴する色というわけでしょう。

   ★

…というようなことに思いが至ったのは、最近下のような品を手にしたからです。


「天の川銀河」の銀文字が光る化粧箱に入っているのは、



国立天文台(NAOJ)のお土産用キーホルダー。


手元の銀河模型の中で、これまでいちばん小さかったのは、タカラの「王立科学博物館Ⅱ」(いわゆる食玩です)に入っていた海洋堂制作のものですが、このNAOJのキーホルダーは、さらにその上(下?)をいく「最小の銀河模型」です。
この愛すべき佳品は、先日コメント欄でtis0さんに教えていただきました(http://mononoke.asablo.jp/blog/2010/06/15/5163726#c7624839)。

しかも、この品は単に小さいばかりではありません。
なんと自ら光るんですよ。それもかなり烈しく。


冒頭で書いたようなことを考えながら、わが銀河系が5色に発光し、リズミカルに脈動する様を眺めていると、ちょっと不思議な気分になります。一種のサイケデリック体験かもしれません。

コメント

_ S.U ― 2015年05月10日 09時56分03秒

3Dレーザークリスタルは色がついていないので陳腐化してきたように感じていましたが、内蔵LEDで照らすという手がありましたね。異なる角度から異なる色を同時に照射して「多色刷」ができるようになるともっと発展すると思いますが、それは可能そうでしょうか。

 五行に色が付いていることを教えていただき、興味深く思いました。そういえば、「九星」にも色が付いていますね。一白水星 とか 七赤金星 とかいうやつです。色は、白黒碧緑黄赤紫 の7色になっていて、この起源はなんでしょうか。五惑星の数=五行の数とも九星の数とも違うようです。碧と緑がダブっていますが、碧は青なのでしょう。ちょっと調べた限りでは色の数の起源はわかりませんでしたが、配色は、九星は河図洛書の3x3魔方陣に起因すると言われていて、そこでは、下段がすべて白になっていて、上段、中段の中央に高貴の色である紫、黄がきているので、魔方陣の配置から来ている可能性が高いように思います。

 ちなみに、現代物理学の素粒子(基本粒子)にも「色」がありまして、こちらは、赤緑青と反赤・反緑・反青の6色および無色(白?)があります。反赤・反緑・反青 は それぞれ光の補色を取って、シアン・マゼンタ・イエローと呼ぶ人がいます。無色は1種類なのか複数種あるのか私にはよくわかりません。「無」色なのだから1種類と考えれば全部で7色あることになります。物質基本粒子の場合は、粒子、反粒子で、すべての色の粒子の電荷の合計がゼロになっているというすばらしい関係があります。
2/3+2/3+2/3-1/3-1/3-1/3-1+0=0。
 この色の種類が宇宙のすべての根本の法則を反映しているものなのか、たまたま派生して生じた強い相互作用の性質だけを記述しているのかは、例によって私にはわかりません。(誰にもわからないかもしれません)

http://www.jicfus.jp/jp/promotion/pr/quark-card-dealer/web/

上の解説は、下のWeb版のゲームの説明書でした。

http://www.jicfus.jp/QuarkCardDealer/

 遊んでみましたけれども、特別面白いわけではありません。

_ 蛍以下 ― 2015年05月10日 13時59分35秒

幻想的で美しいですね。
脱線して恐縮ですが、上段左の青は「銀河鉄道の夜」のイメージピッタリだ、などと思ったりするんですが、そう思うのは、ひとえに私が最初に手にした銀鉄が新潮文庫であり、その表紙が青だったことの影響にすぎないのか?新潮文庫ではなく、たとえば藤城清治さんの絵本であったならまた別のイメージカラーになっていたのか?などと、どうでもいいことを考えてしまいます。
「イメージカラー」というものは多くの人が共通した感覚を持っているように思いますが、全然違う色を連想する方もいて不思議です。

_ 玉青 ― 2015年05月11日 07時00分01秒

○S.Uさま

そうえば、素粒子の世界にも「色」があったのでしたね。
(例の贈り物、改めてありがとうございました。)

量子色力学と古代哲学の言い分を並べると、何となくそこに相同性も感じられて興味深いのですが、これは一体どういうわけでしょうね。方法論は全然別でも、結局は似たような脳みその活動の結果ですから、「事象の切り出し方」と言いますか、問いの立て方は似てきますし、結論部分も人間の直観になじみやすい形で定式化される…ということでしょうか。(人間には、それが説明すべき事象であると認識すらできない事柄も、きっとこの世には多々あると思うのですが、そうなるとそれを問うことも、答えることもできません。これは単なる不可知論ですが、私はわりと不可知論に親しみを感じる傾向があって、仏教の「無明」の説に惹かれるのも、そのせいでしょう。)

   +

ときに九星の色ですが、その根拠はまったく分かりません。
五行に配当された方位のシンボルカラーとは、中央=黄色、東=青(碧)は共通ですが、あとは対応しませんし、五大惑星のシンボルカラーとの比較でも、三碧木星(四緑木星も?)、五黄土星、六白金星を除けば対応していません。
反対に、このことから両者において共通する(東、木気、青)と(中央、土気、黄)の組み合わせには、よほど重要な意味があるのかなあ…と思ったりします。

○蛍以下さま

あ、私も同じ新潮文庫派です。
そして銀河鉄道のイメージカラーは、内容からいって当然青と銀だろう…と思うんですが、おっしゃる通り、これはその人の銀鉄体験によっても変わってくるかもしれませんね。
なお、このキーホルダーは、結構派手な光り方をするので、他のものだったら単に「ネオンサインみたいだなあ…」で終わってしまうかもですが、対象が銀河だけに、いかにも幻想味が濃いですね。

_ S.U ― 2015年05月11日 20時40分15秒

 中世以降の朱子学と仏教は禅宗でつながっているらしいですが、それはさておいて、現代物理学と似ているのはたいへん面白いです。私も、同じ人間の考えることだから似たようなことになる、というのが無難な見方で正しいのではないかと思います。また、それらが、自然哲学として継続的な成果を挙げたことも事実なのでしょう。

>不可知論~「無明」
これは、朱子学で、物質(気)の上に法則(理)が乗っているという形而下的な見方をしているのと同様に、仏教でも、物質が無ならば法則も無として一旦「無」を優先的に見たと考えてよろしいでしょうか。しかし、仏法で、「無」と悟ったら何をやっても無意味だということにはなっていないようですので、無にも何らかの意味を求めているのだと思います。

 不可知論や「無明」は、量子力学では観測理論(「観測しないものは、本質的に確定できない」)に対応するのでしょうか。観測理論では、物質の局所的実在性は否定されますが、より広い意味の実在論は放棄しませんので(すべて放棄すると、形而下学になりませんので)、「無」の意味もより拡張された形で存在することになります。 その結果どうなるかはわかりませんが、全体として、朱子学や仏教が、現代物理に共通する見方をしているという大勢はそんなに変わらないように思います。

>九星
 九星の色については、よくわからないようですね。人が作った理論ですから、やむを得ないことかもしれません。以前も述べたような気がしますが、自然がときに3個以上の要素の対称性(3次元空間とか量子色力学とか)を見せるのは想像を絶することで、なかなか人の想像の及ぶところではないようです。

_ 玉青 ― 2015年05月12日 07時11分21秒

うーん、これはだいぶ深いところに入ってきましたね。
しばし腕組みをして虚空を睨みましたが、どうも答が降りてきませんので、この件は継続審議に付すことにいたしましょう。(それにしても、最近身体を動かす機会がほとんどなくて、「只管打坐」に近いので、じきに心身脱落の至境に達するやもしれません。)

_ S.U ― 2015年05月12日 17時30分55秒

>継続審議
 はい。我々が10年や20年継続審議にしたところで、世の中で先に解決されてしまう心配は先ず無いと思うので、それでよいと思います。「只管打坐」の成果が現れましたところで、ご披露いただけますれば幸いです。

 当方は、今のところ只管打坐の成果といっても、足腰が弱って腰や膝が痛む程度です。

_ 時空のトンネル ― 2015年05月20日 20時48分23秒

玉青様 いつも興味深い記事を読ませていただいております!明日からの東京恵比寿でのガラスの展示会で天の川、流れ星をイメージした作品を作りました。ぜひご覧いただけたらうれしいなとメールしました! ガラスの材料なども展示しています。
http://www.fusionfactory.jp/exhibition.html

_ 玉青 ― 2015年05月21日 21時10分41秒

ご案内ありがとうございました。
ガラス塊の中の常夜の世界。壮麗な銀河。かそけき流星。
涼味あふれる、これからの季節、机辺で賞玩するにはうってつけのお品ですね。
ここでもまた地方在住の悲哀を感じますが、当地より展覧会のご盛況をお祈りしております。そしていつか是非!

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