「星を売る店」のドアを開ける(12)…黒き道士、虎山(こざん)に星を逐ふ話2015年07月05日 20時10分42秒

今日は所用で京都へ。
所用の合間に、以前から気になっていた「ウサギノネドコ」さんを訪問し、その後Lagado研究所で、オーナーの淡嶋さんから近況などを伺い、大いに心のコリがほぐれました。会って話をすることって、やっぱり大事ですね。

   ★

さて、「星」は主にエジプトで商われているとはいえ、その産地はエジプトから更に遠く離れたエチオピアです。

 ここにリー大尉と申すのはすぐる大戦に相当名を売った、飛行機乗りだそうでございますが、このリー氏がなんでもカイロのバーで、隣席のアラビア人同志のあいだに交わされていた、ふしぎな話を耳にしたのでございます。かれはその会話に語られていたことの真相をきわめるべく、アラビア人のひとりをやとって、エチオピア高原のどこかにある奇蹟の地を訪れたのでございますね。その結果が、あのポスターにえがかれたのとそっくりのことを、眼の前に見ることになったのでございます。

古代より続く栄えある王国の版図内、冷涼なエチオピア高原の一角に、その奇蹟の地は存在します。そこは容易く星に手が届く、「世界でいちばん天に近い場所」。


その実景を髣髴とさせる絵葉書を見つけました。


アビシニアはエチオピアの古名です。
乾いた大地にそびえる奇峰は、「モンターニュ・デュ・ティーグル」、英語風にいえば「タイガー・マウンテン」。しかし不思議なことに、フランス語にしろ、英語にしろ、この地名で検索しても、現在エチオピア国内には該当する場所が見つかりません。絵葉書になるぐらいですから、有名な場所だと思うのですが、何だか狐につままれたような気分です。

まあ、探し方がまずいだけかもしれませんが、しばし「これぞ神秘の霧に閉ざされた謎の山」ということにしておきましょう。


浅黒い男たちが、この頂で盛んに網をふるって、星を捕える有様が思い浮かびます。

 〔…〕さてそうとした時に、なぜ世間がそれを知っていないか?これまたもっともな疑問でございましょう。世界中で一等天に近い所だという前述の場所では、星を取ることについて何とかいう長老が取り締まっているのだそうで、このハッサン・エラブサという男のきげんを取りむすばないことには、この星は手に入れがたいのでございます。こういう事情にあって、―当店はドイツの東洋更紗商人が経営しておりますが、いまここにあるだけの星を蒐め得たのは、めずらしいことだと同業者間にうわさされているほどでございます。


「それと申しますのも、当店のあるじがそのエチオピアの長老と格別昵懇のため、特に許しを得て卸してもらっている次第でして。―これは彼の地の族長が親しく身に着けていたのを贈られた指輪だそうでございます。」

…という風に、ここでも空想に尾ひれが付きますが、これがエチオピアの銀製指輪で(元の持ち主はそう述べています)、私がそれをドイツの人から入手したことは空想ではなく、たしかな事実です。


月星マークは、イスラムモチーフなのでしょうが、ここでは「星捕りの長老のしるし」ということにしておきましょう。

   ★

 こう申し上げたところで、はたして皆さんがどこまで信用あそばすやら……いやそんなことより、この小さな店をあずかっているわたくしにして、うちのあるじがいかような手段でこの品を集め、どれくらいのねだんで売るつもりやら、またこれから先、どうして行くつもりやら……そんなこと一切にまるで見当がつかないのでございます。

店員の発言は妙にフワフワしていますが、物語はいよいよラストへ―。

(この項つづく)

コメント

_ S.U ― 2015年07月06日 21時42分10秒

ところで、ちょっとひっかかるのは、エチオピアの長老というのはキリスト教徒ではなかろうかということです。イスラム教徒がエチオピアに出張して、長老と交易をしているのは、もちろんあってもよいような気はするのですが、ハッサン・エラブサがエチオピアの土着の長老というのは、よろしいのでしょうか。

_ 玉青 ― 2015年07月06日 23時33分12秒

「エチオピアにては、むろん多くの民がキリスト、次いでアラーの神を奉じておるわけですが、それらの者に混じり、おりおり太古の月神崇拝を持ち伝える部族も散見されるとのことでございます。ことに辺境の地にては、その風がなかなか盛んで、例の星捕りの部落などもまさにそれだそうでして」…ということにしてはどうでしょう。(リアリズムだ何だと言いながら、こうなるともはや何でもありですね・笑)

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