京都博物行(3)…パイプウニの骨格(後編)2015年07月13日 06時17分58秒



このパイプウニを、ウサギノネドコさんでは、ナウシカの王蟲(オーム)にたとえて販売されていました。この体型と目玉のような突起は、たしかに王蟲の姿を思わせますね。まさに異形の者という感じです。


くるっと裏返すと、そこにはっきりと見える五放射相称構造。
それにしても何なんですかね、この五放射相称って。

(1883年にニューヨークで刊行された比較解剖学図譜より)

動物とは文字通り「動く物」で、ごそごそ動きながら栄養を摂るのが基本ですから、前後(というか上下というか、ともかく口とお尻)は意味のある区別―すなわち非相称―で、同時に左右は相称の姿をしている種類が多いのは、そのせいでしょう。

一方クラゲみたいに、口だけあってお尻がないような連中は、より単純に四放射相称や二放射相称で十分だ…というのも、何となく分かる気がします。

しかし、ウニの場合、1、2、4、8、16…と倍々ゲームで受精卵の卵割が進んだ果てに、五放射という「奇数」がいきなり出現するのが、何となく天然自然の理に反するというか、いかにも不可解な感じです。

(同上)

この辺は同じ棘皮動物の仲間のヒトデもそうです。
ひょっとして、この奇怪な連中から星が生まれ、そこからさらに人も生じたのではないか…何でも人間は星から生まれたそうだし…。

というようなことを、カウンターでひとりごちていると、隣で黙って飲んでいた男の眼鏡がきらりと光り、周りの客もいつの間にか星の姿になって、非常に剣呑な目に合いかねないことを、足穂読者は知っています。

(星と人)

   ★

真面目な話、進化の枝分かれからいうと、棘皮動物は、クラゲよりも、タコよりも、エビよりも、ミミズよりも、ずっと人に近いそうです。
そして、元々左右相称だったものが、進化の過程で二次的に放射相称の姿になったので、ある意味、彼らは人よりも一歩先を行っているのかもしれません。

コメント

_ S.U ― 2015年07月14日 19時49分18秒

カシパンというやつがこういう形をしていますね。あれもウニの仲間だそうですが、5回対称をしています。あれが、左右対称の形から進化したとはとても思えません。でも、仲間に、ブンブクチャガマという左右対称のやつがいます。

 左右対称→5回対称 というふうに、力が働くのだとすると、物理的に面白いと思います。

_ 玉青 ― 2015年07月15日 06時55分21秒

どうもはかばかしくコメントへのお返事も出来かねる状況ですが、どうぞ心中お察しください。のんびりブンブクチャガマで茶を沸かし、カシパンをほおばりながら、博物学の話題を縦横に語れる世の中が、一日も早く訪れることを望むばかりです。

_ S.U ― 2015年07月15日 18時50分47秒

>はかばかしくコメントへのお返事も出来かねる状況

 あぁ、例の違憲法案ですね。それはいけませんねぇ。 じつに「いけん」のう(←広島弁)。

 それでは、老婆心ながら、
http://www.jomo-news.co.jp/ns/2015042301001051/news_zenkoku.html
こういうのに参加されることを検討されるとかどうでしょうか。
被害の理由は、「精神的苦痛を受けた」ということを検討しているそうです。

 確かに、最大権力者のアウトロー宣言は、脅迫、パワハラとしては最強だと思います。警察も人権委員会も動きまへんで、ということですからね。良いとこまでいくかもしれません。「長沼ナイキ」みたいなのもいいですが「専横無法による精神的苦痛」というのが現代的かもしれません。

_ 玉青 ― 2015年07月16日 19時30分29秒

気骨がありますね。そして痛快です。
国学の本場、伊勢松阪にこういう人士が現れるというのは実に頼もしく、底の浅い「ネトウヨ」気質の首相にとっては、それ自体痛烈な批判でしょう。(でも蛙の面に何とやらの感なきにしもあらず…)

_ S.U ― 2015年07月16日 21時49分19秒

>でも蛙の面に何とやら
 ほんとにそうですね。識者の意見によると、人権侵害で刑事告訴できるような場合を除けば、基本的には訴訟は最後の手段であり、通常は、陳情や交渉、署名、デモや争議、そして政治宣伝、選挙運動によるのが、自由主義、民主主義の本来の正道だそうです。

 裁判にしても、「統治行為論」という裁判官のサボタージュ宣言が出てきます。(憲法判断ができないなら、黙って裁判官を辞任するべきだと思うのですが、仕事をしません、というのが判決として通って仕事をしたことになるという不思議な世界です。)

 まあ、でも現代人はみんな忙しいですから、こういう原告団結成というのも現今向けでよろしいのじゃないでしょうか。裁判になれば、少なくとも、1~2年、議論と世間を引きつけておくことはできますから、一過性で忘れ去られることもないです。

_ 玉青 ― 2015年07月17日 18時44分53秒

現政権によれば、何百人の学者の意見よりも、司法の判断はずっと重いそうですから(私も「重い」ことは認めますので)、裁判官の方々は胸を張って判断していただきたいですね。

_ S.U ― 2015年07月17日 21時05分17秒

>裁判官の方々は胸を張って判断していただきたい
 本当にそうしていただきたいものです。
 私は、「胸を張って」に、「争点や事実から逃げずに」、「憲法、法治主義から逃げずに」という要求を加えたいです。

 学者は、日夜、研鑽し、思考を巡らして、様々な可能性を探究し、未踏の領域で真っ向勝負を挑んでいます。

 裁判官はどうでしょうか。行政の現状追認のために、わざわざ逃げ口を捜して、逃げまわってばかりじゃないですか! 現状では、学者のほうが100倍重いことを私は断言いたします。

_ 玉青 ― 2015年07月18日 11時42分45秒

ドンとテーブルを叩く音、カチャンとカップとスプーンのぶつかる音が、私の耳にははっきりと聞こえました。(^J^)

_ S.U ― 2015年07月18日 13時15分50秒

(夜が明けたら右手が痛かったです。(笑))

 学者の肩を持ったついでに、下のページも紹介させて下さい。研究者 あるいは 市民として参加できるようになっています。
http://anti-security-related-bill.jp/

 こんなところをお借りして、署名の宣伝をするのが不適切なことは重々承知しておりますが、今回のは、天文、素粒子の分野で一般人にまで広く知られている、池内了先生、海部宣男先生、益川敏英先生が呼びかけられている活動のご紹介としてご覧いただければと存じます。

_ 玉青 ― 2015年07月19日 07時00分23秒

やや、これは。
すでに先日、別方面から教えていただき、微力ながら一市民として賛同署名させていただきました。ぜひこの思いが力となり、形となりますように!

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