京都博物行(4)…ライオンゴロシの実(前編)2015年07月15日 06時37分36秒

日本国民の1人として強行採決に強く反対します。
まさに国民を愚弄するものです。

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ウサギノネドコさんで手に入れた白い箱、その中身は「ライオンゴロシ」。


パイプウニ同様、これまた異形の姿ですが、こちらは何やら邪悪なムードです。
この恐ろしげな植物について、ウィキペディアはこう記しています。

「ライオンゴロシ(学名 : Harpagophytum procumbens)は、ゴマ科の植物の1種である。木質でかぎづめのある果実をつけることが特徴で、英名の「devil's claw」(悪魔のかぎづめ)、「grapple plant」(絡み合う植物)の由来となった。〔…〕果実のかぎづめにより動物の毛やひずめに絡み付き、それによって、広く散布され、自生範囲を広げている。

(まさに「悪魔のかぎづめ」)

ライオンの口にこの果実が絡み付くと、その痛さのあまり、餌をとることができず、餓死したことから「ライオンゴロシ」という名がつけられたと言われる。」

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ライオンゴロシの名と、それにまつわるエピソードが広く知られるようになったきっかけは、作家の小川洋子さんが、小説「冷めない紅茶」(1990)の中で、登場人物にそれを語らせたことではないかと思います。

植物の雑学本では、今も「事実」として書かれている、このエピソード。
しかし、標準的な参考図書である「原色世界植物図鑑」(北隆館、1986)を見ると、そこにライオンゴロシの和名はなく、「ハルパゴフィツム・プロカムベンス」という学名のまま登場し、「果実は成熟すると、長さ3cm位のかぎ形の突起に包まれ、動物にはいやがられる」とあるのみで、それ以上の記述はありません。


それに、ウィキペディアを見る限り、この植物とライオンを結びつけて記述しているのは日本語版のみで、少なくとも英・独・仏語版のウィキペディアには、ライオンに関する言及は見当たりません。

となると、タコノマクラとか、リュウグウノツカイとかと同じく、ライオンゴロシも、その奇妙な姿形に由来する空想的な名称…という可能性はないでしょうか?

でも、仮にそうだとしても、ライオンも、ライオンゴロシも生息しない日本で、なぜそんなもっともらしい説が生まれ、恐ろしげな名がついたのか?
―これは調べる価値があります。

(以下、謎解きは後編につづく)