色絵誕生(2)…カテゴリー縦覧「印刷技術」編2015年07月28日 19時47分35秒



「しのぶ石」。
植物化石のように見えますが、代表的な偽化石で、この模様は純粋に物理・化学的作用によってできたものだそうです(すなわち、岩の隙間で樹枝状に成長した、二酸化マンガンの結晶)。


上の面の裏側。
きわめて薄く剥落する性質があり、そうした微小な隙間で、しのぶ石は成長します。

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しかし、今日の主役はしのぶ石ではなくて、その母岩である石灰石です。

ドイツ南東部の小さな村、ゾルンホーフェンは、化石好きには周知の場所。
その石灰岩層はジュラ紀にさかのぼり、始祖鳥をはじめ、教科書に載っているような多くの有名な化石がここで発見されました。上のしのぶ石も、ゾルンホーフェン、ないしその周辺で採取されたものです。


上空から見ると、村の近くには白茶けた採石場が見え、今も採掘が続いていることが分かります。

ゾルンホーフェンが有名なのは、始祖鳥のふるさとであると同時に、石版画のふるさと―より正確には、石版石のふるさとだからです。この地に産する、薄く層状をなし、滑らかで水を吸いやすい石質が、石版の原版として最適だったのです。

(しのぶ石の側面。研磨面はごく緻密で滑らかです)

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前回の記事の末尾で、印刷技術の全貌を整理するみたいなことを書きました。
しかし、関連する本を手にとってはみたものの、まったく理解が追い付かないので(最初は追いつく気でいたのですが、ダメでした)、ここでは多色石版とその後継技術の端境期のこと(金属平版からオフセットの誕生まで)を、理解できた範囲で書いて行くことにします。

(この項、先の見えないままヨロヨロ続く)