胸元をかざる宇宙のヒーロー…カテゴリー縦覧「こまごまグッズ」編2015年08月12日 06時04分14秒



以前も登場したスプートニク3号のシガレット。
http://mononoke.asablo.jp/blog/2015/04/04/7603862

今日は「こまごまグッズ」なので、その中身を見に行きます。
中身はこれ以上ない…というぐらいこまごましたピンバッジ。


1950年代~70年代、東西冷戦下で展開された、米ソの宇宙開発競争。
現在の中高年世代は、そのころの世間の空気をよくご存知と思います。
スペースロマンと国威発揚がないまぜになった宇宙開発の話題は、当時恰好のプロパガンダツールでしたが、このソ連製ピンバッジも、そんな時代の空気を今に伝えています。


宇宙時代到来のたしかな道筋をつけた、ロケット工学の父・ツィオルコフスキー(1857-1935)。本物のロケットが飛ぶ頃には、すでに過去の人でしたが、ソ連ではずっと英雄扱いでした。

(決めゼリフは「地球は青かった」)

ボストーク1号(1961)で、人類初の有人宇宙飛行を成し遂げた勇士、ガガーリン(1934-1968)。

(同じく「ヤー・チャイカ(わたしはカモメ)」)

ボストーク6号(1963)で、女性として初めて宇宙飛行をしたテレシコワ(1937-)。

   ★

ガガーリンも、テレシコワも、今では注を付けないと伝わりにくいかもしれません。
とはいえ、人々に感動を与えたその有名なセリフも、多分に誤訳・誤伝によるもの…なんてことは、さっきウィキペディアで知ったばかりなので(※)、私にしても、そう偉そうに言うことはできません。

(※)わりと即物的な通信内容だったのが、いろいろ潤色されて「名セリフ」になったらしいです。まあ、そこが報道記者の腕の見せ所だったのでしょう。


ガガーリンが乗り込んだボストーク1号。すっきりしたデザインがカッコいい。


黒地に金が映える宇宙船。ボストーク1号の本体(左側の球体)とロケット最上段。


ボストーク計画に先行したスプートニク


何だかよく分からないけれども、うねうねと遊泳する宇宙飛行士。
変な絵柄ですが、背景の緑がきれいです。

   ★

カッコよくもあり、かわいくもあり。
たかがピンバッジとはいえ、そのデザイン力はなかなかあなどれません。
冷戦下の鬱屈した思いが、地上に託せぬ夢をせめて宇宙に託そうと、こういう瑣末な対象に自ずとはけ口を求めたせいかもしれません。

コメント

_ S.U ― 2015年08月12日 09時34分05秒

ボストークの宇宙船のほうは、モスクワの博物館に飾られている模型などもあって、比較的早い段階から、本物らしい形状の画像が公表されていたように思いますが、打ち上げロケットは長らく機密になっていて、ベタ塗りの修正写真かいい加減な図案が公表されていました。(下から4つめの写真の「カッコいい」いい図案がそれです。ホンモノのデザインは、こういうようにはカッコよくない?)。 格好の問題ではなく、軍事機密だったというのことなのですけど。

 いつロケットの正しい形状が公表されたのか、ちょっと気になりますが、すぐにはわかりません。ほぼ同型のソユーズロケットのほうは、1975年の米ソ共同飛行までには公表されていましたが、それまでにボストークのほうがどうだったかは記憶にありません。基本的には、ソユーズを公表してしまえば、ボストークを秘密にする意味はないと思います。

_ 蛍以下 ― 2015年08月12日 19時29分04秒

ソ連の神秘性と素朴さが同居している感じが実にいいですね。
この硬質なイメージこそが、私がロシア製のマクストフ・カセグレン望遠鏡に惹かれる理由かもしれません(高いのでなかなか手が出ません^^)。
アメリカ版のスペース系ピンバッヂもお持ちでしたら、是非、ご紹介いただきたいです。
ところで、ピンバッヂって不思議なものですね。売れてもたいして儲からないと思うのですが、世界中にあるんですから。

_ 玉青 ― 2015年08月13日 19時44分41秒

○S.Uさま

ああ、冷戦の影はかくまで深し…。
ときに、当時の東側世界特有のデザイン感覚って、何となくある気がするんですが、このバッジを見る限り、ソ連の人も、ぶっといロケットがゴオ…と真一文字に飛ぶよりは、スマートなロケットが弧を描いて飛ぶ方がカッコいいと感じていたことは読み取れますね。

○蛍以下さま

アメリカ製のピンバッジは、どうも宇宙モノに関しては食指が動きません。
ただ、それ以外のものはジャラジャラしているので、いずれ登場させましょう。
ときに、ピンバッジで果たしてどれだけ儲けがあったのか、他人ごとながら気になりますね。日本だと、バッジづくりの会社は、社章、校章、徽章なんかと兼業…というか、そちらが本業のところが多いようなので、海の向うも事情は同じかも。

_ 蛍以下 ― 2015年08月13日 23時22分36秒

玉青様

あ、考えてみたらそうですね。受注生産だから売れても売れなくても、あまり関係ないわけですね。
それにしてもアメリカの宇宙モノに食指が動かないというのは、こと宇宙開発に関してはソ連贔屓、ということでしょうか?それともデザイン的な理由ですか?(こだわるようでスミマセン。意外なお答えだったもので・・・^^)

_ S.U ― 2015年08月14日 19時49分28秒

すみません。前の投稿で「言及」が漢字誤変換で、景気の悪いことになっていたので、再投稿させていただきます。できれば、前稿は削除をお願いします。
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>ソ連の人も、ぶっといロケットがゴオ…と真一文字に飛ぶよりは、スマートなロケットが弧を描いて飛ぶ方がカッコいいと感じていたことは読み取れます

 あぁ、そうですね。そういう視点で、この「架空の『カッコいい』ロケット」を観たことはありませんでした。
 
 それでも、このボストークの流れを汲むソユーズロケットが、現在に至るまでのほぼ50年間、ただただ鈍重に、真っ直ぐに、黙々と、宇宙飛行士を地球軌道まで押し上げ、運び続けてきたおかげで、現在の国際宇宙ステーションの運用ができ、ロシアの宇宙技術レベルを世界トップの地位に留めているというのは、歴史の皮肉と言っては不適切でしょうが、面白いところだと思います。

>冷戦の影
 私がかつて、冷戦の影を感じたもう一つのエピソードに言及させて下さい。それは、今や、かつてのソ連の仮想敵国日本の自衛官出身の油井飛行士も宇宙に飛び立つという「バイコヌール宇宙基地」が、機密のために偽りの場所にあって、バイコヌールではなくレニンスクというところにあったことです。ソ連がこんな小細工で発射場所を偽っていたことを、私は1975年に新聞で読んで初めて知りました。(この時点では、ソ連からは正式には公表されず、いわば「公然の虚偽」になっていたのだと思います。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%8C%E3%83%BC%E3%83%AB

 ↑現在では、「バイコヌール基地」のあるところ(レニンスク)が、改名されて「バイコヌール」になっているそうです。元々のバイコヌールはどうなったのか気になります。

_ 玉青 ― 2015年08月14日 20時01分27秒

○蛍以下さま

いやあ、特にソ連びいきということもないのですが、ことピンバッジに関しては、質・量ともソ連に軍配が上がるので、相対的にアメリカものには食指が動かない感じです。切手なんかもそうですね。東側の方が、ああいうこまごました(お金のかからない)媒体に、いっそう力を注いでいたせいかもしれません。
(アメリカの宇宙モノは、むしろ絵本とか児童書にいいものが多い気がします。)

○S.Uさま

>ただただ鈍重

いやあ、いかにもロシアですね。
貴い土の匂いがします。

興味深いエピソードのご紹介をありがとうございます。
バイコヌールの件は、まったく知らずにいたので、びっくりしました。
こちらは実直な土の匂いではなく、冷たく息苦しい体制の匂いがしますね。

_ S.U ― 2015年08月14日 21時21分47秒

すんません。今度はソ連のバッジに関してもうひと言及・・・

 2カ月ほど前に、モスクワのシェレメチボ空港を成田への乗り継ぎで利用することがありました。それで、例によって、天文古玩さんの影響もあって、ソ連の宇宙開発グッズお土産を捜したのですが、笑顔のガガーリンのTシャツしかありませんでした。こんなものは買ってもしゃあないです(笑)。

 バッジは、旧ソ連軍関連とみられる徽章、襟章や、レーニンの肖像のものはありましたが(もちろん現代製のまがい物です)、宇宙関係のものはまったくありませんでした。ああいう旧ソ連のまがい物土産は、言わば半分冗談の日本で言えば昭和30年代レトロギャグみたいなものかもしれません。結局何も買いませんでした。

 それで、空港でもっとも印象に残ったのは、搭乗ゲート付近のレストランに宇宙飛行士のマスコット人形があって、それが何とアポロ飛行士の月面活動の宇宙服だったことです。私はロシアについてこれほど情けないと思ったことはありません。なぜ、レオノフの宇宙遊泳でないのか! 1969年のアポロの月面着陸の時、ソ連は国内では一切の報道をせず、完全に黙殺したものでした。まあ完全黙殺も大人げなく情けないものではありますが、モスクワの国際空港でアメリカ宇宙飛行士はいけません。ロシア人は怒らないのか、と思いました(もちろん怒っている人はいませんでした)。

_ 玉青 ― 2015年08月15日 11時18分05秒

あ、それはいけませんね。

「熊さん、どうしたい、元気がないじゃないか」
「いやご隠居、あっしも近頃からっきし意気地がなくなっちまって…」
「いけないねえ…まあ、米吉の奴も齢のせいか、最近じゃ昔ほどの覇気はないな」
「あの大和屋の倅はどうしてます?」
「ああ、いっとき鼻息が荒かったが、あんな空元気がそう続くもんでもないよ」
「くたびれた連中ばかり揃って、この町内も一体どうなるでしょうねえ」
「どうなるかねえ…」

_ S.U ― 2015年08月15日 13時21分44秒

いけませんねぇ。世間は、どちら様も左前のようで・・・

 でも、各国の首脳の中では、熊のプーちんが、いまだ一番意気盛んで、弄する策も巧みなのではないでしょうか。

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