お宝オーラリー ― 2015年09月21日 17時15分23秒
いろいろなことがあり、「天文古玩」本来の記事を書くのは久しぶりなので、勘を取り戻すために、今日は絵に描いたような天文古玩を登場させます(といっても、他人のふんどしです)。
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先日、アンティーク望遠鏡のメーリングリストで、「望遠鏡じゃないけれど、これは一見の価値あり(It's not a telescope, but it's quite spectacular.)」というタイトルでメールが流れてきました。そこでリンクを張られていたのが、ドーンとこれ。
ボーナムズというのはイギリスに本拠を置くオークション会社で、サザビーズやクリスティーズほどではないものの、1793年創業の立派な老舗だそうです。
来たる10月27日にロンドンで開催される同社のオークションは、「科学・技術・からくり音楽の機器類」を集めた売り立てで、そのロット番号104が、この見事なオーラリー。
ハンドルを回すと、水・金・地・火・木・土・天の6惑星が、太陽の周りをゆっくり回るという雅味に富んだもので、本体は真鍮、惑星は象牙の削り出し。
(でもこの象牙のせいで、米国には持ち込み禁止と註が付いています。これはお体裁で書かれているわけではなく、アメリカではオバマ政権になってから、象牙品の輸入が―たとえ歴史的な品でも―厳格に制限されていて、今や「ご禁制品」扱いの由。)
オーラリーの右下に見える、木製台座に乗ったのは、「テルリウム」(左)と「ルナリウム」(右)だと説明には書かれています。
ここに出てくる「オーラリー」「テルリウム」「ルナリウム」は人によって用法が異なり、用語にかなり混乱が見られますが、上記のテルリウムは、太陽の周りを公転する地球の動きを、ルナリウムは地球・月・太陽の三者の位置関係を示す器具だと説明にあるので、要は「二球儀」と「三球儀」のことです。まあ、名称はともあれ、いずれも見事な工芸品の域に達していることは異論のないところでしょう。
これらはいずれもイギリスのMatthew Berge の作品で、バージは天文ファンには「ラムスデン式アイピース」でおなじみであろう、Jesse Ramsden (1735-1800)の下で職長として働いていた人物。ラムスデンの死後は、その工房を引き継ぎました。したがって、これらの機器も1800年をあまり下らない時期に作られたものと考えられています。(以上はボーナムズの文章の受け売り)
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さて、気になるお値段の方は、落札予想額 5万~7万英ポンド、日本円で 930万円~1,300万円と出ています。これはかなり強気の値付けだと思いますが、話半分としても相当なものです。
いったい誰が買うんでしょうね。
これぐらい隔絶していると、羨ましいとか、妬ましいという気も起こりませんが、買った人はぜひ大事に持ち伝えて、次代に無事引き継いでほしいと願うばかりです。
これぐらい隔絶していると、羨ましいとか、妬ましいという気も起こりませんが、買った人はぜひ大事に持ち伝えて、次代に無事引き継いでほしいと願うばかりです。
(ブログの方は、少しづつリハビリを始めます)
コメント
_ S.U ― 2015年09月22日 08時41分18秒
_ 玉青 ― 2015年09月23日 10時09分23秒
>僅かな植樹…嘘っぱち
まさに木を見て森を見ずというやつですね。
どうもこういうおかしなことが、世間には横行しています。昨日の新聞には、「生活保護世帯の子供さんが奨学金を受けても、今後はそれを収入認定して保護費を減らす扱いをやめることにした」という、何だか当たり前のことが、さも国の手柄のように書かれていて、これまた変だなあと思いました。(その隣の「首相動静」欄では、首相が教育関係者とゴルフ三昧の様子が書かれていて、本当にいきどおろしく思いました。)
それにしても象にとっては、進化の過程で獲得した立派な牙ですが、人間という妙な存在が登場したおかげで、今や牙こそ身の不運、象にとっては一大痛恨事でしょう。もし十分に時間的余裕があれば、象は再び牙のない姿に進化するかもしれませんが、もはやそれだけの余裕もありませんし、「花粉のない杉」と同様「牙のない象」を人工的に作り出すしか、彼らを救う道はないのではないか…というような、いささかグロテスクな発想もしてしまいます。
(ときに掲示板へのご投稿ありがとうございました。取り急ぎこの場を借りて御礼を。)
まさに木を見て森を見ずというやつですね。
どうもこういうおかしなことが、世間には横行しています。昨日の新聞には、「生活保護世帯の子供さんが奨学金を受けても、今後はそれを収入認定して保護費を減らす扱いをやめることにした」という、何だか当たり前のことが、さも国の手柄のように書かれていて、これまた変だなあと思いました。(その隣の「首相動静」欄では、首相が教育関係者とゴルフ三昧の様子が書かれていて、本当にいきどおろしく思いました。)
それにしても象にとっては、進化の過程で獲得した立派な牙ですが、人間という妙な存在が登場したおかげで、今や牙こそ身の不運、象にとっては一大痛恨事でしょう。もし十分に時間的余裕があれば、象は再び牙のない姿に進化するかもしれませんが、もはやそれだけの余裕もありませんし、「花粉のない杉」と同様「牙のない象」を人工的に作り出すしか、彼らを救う道はないのではないか…というような、いささかグロテスクな発想もしてしまいます。
(ときに掲示板へのご投稿ありがとうございました。取り急ぎこの場を借りて御礼を。)
_ S.U ― 2015年09月23日 16時29分53秒
>「牙のない象」
現状の規制もわけがわかりませんが、ますます、わけのわからない話になってきましたね。
Wikipediaの「象牙」を見るとさらにわけがわからなくなりました。「工芸」のところに、「ロシアの永久凍土より掘り出されたマンモスの牙が代替品として利用される」と書いてあります。現代の象は、保存状態の良いマンモスの化石(氷漬け?)よりも貴重なのでしょうか。自然に死んだ象と殺した象は区別は付かないけど、もはやマンモスを殺すことは不可能というロジックなのかも知れませんが、そこまでせにゃならんもんでしょうか。
現状の規制もわけがわかりませんが、ますます、わけのわからない話になってきましたね。
Wikipediaの「象牙」を見るとさらにわけがわからなくなりました。「工芸」のところに、「ロシアの永久凍土より掘り出されたマンモスの牙が代替品として利用される」と書いてあります。現代の象は、保存状態の良いマンモスの化石(氷漬け?)よりも貴重なのでしょうか。自然に死んだ象と殺した象は区別は付かないけど、もはやマンモスを殺すことは不可能というロジックなのかも知れませんが、そこまでせにゃならんもんでしょうか。
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ところでまた脱線しますが、種の環境の維持や絶滅危惧種を密猟から守るために輸入制限をするのはもっともだと思いますが、伝統工芸品まで取引禁止しないといけないものかどうも疑問です。それなりの理由はあるのでしょうが、どうも偽善的デモンストレーションの比率が大きいように感じます。(象牙はよくわかりませんが、捕鯨は特にそうです)。
自然保護が大切なのは議論の余地はありませんが、政府がその活動を見せるために経済全体に影響のない弱小のところをいじめて、大手企業の環境破壊の免罪符にしているようにしか見えません。森を切り倒して工場を建て燃料をばんばんつかってCO2を放出して儲けている企業が(ここまではいいです)、僅かな植樹をしていることを宣伝するならそれは嘘っぱちで許せないことでしょう。それから、密猟を撲滅するのなら、材料の密輸をしている業者団体から手入れすれば良いことで、正規の商売をしている人や職人まで悪者側に巻き込むことはないはずです。
自然保護団体は自然保護に全力で努めていただいて良いですが、政治的に利用されているという自覚はあるのでしょうか。列国の政治家は、動物保護以前にもっと人間を保護する側から考えるべきことがあるのではないでしょうか。象牙の流通は禁止で、象でも人でも撃てる銃は野放しですか。(ここのところ、ちょっと反米的言動が増えていてすみません)
といっても、私自身としては、伝統的象牙工芸品など購入を検討する可能性すらなく、買うとしたらせいぜい怪しげな違法品をつかまされるくらいですから、取り締まっていただいてもとくに心配はないです。