アリス150歳2015年09月29日 20時22分51秒

昨日の記事を書いた直後、「今年は『不思議の国のアリス』出版150周年なので、アリス本でも買われてはいかがですか?」…という営業メールが、古書検索会社から届きました。その偶然の一致に驚くと同時に、へえと思いました。


■Alice at 150: Wonderful Editions  http://tinyurl.com/nr5zgtj

ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』が、有名なジョン・テニエルの挿絵を添えてロンドンのマクミラン社から出たのは1865年で、日本でいうと明治維新の3年前のことです。

1865年の刊記を持つ「本当の初版」は、印刷の質に画家のテニエルが不満をもらしたため、直ちに回収され、改めて1866年の刊記を持つ版が作られました。(ただし、それが店頭に並んだのは1865年の暮れのことで、これも古書市場では「初版」として扱われています。)

時折、何億円という値が付いてニュースになるのは、1865年の「本当の初版」の方で、回収漏れとなった、ごくわずかな部数(数部ないし20部内外)が、世界のそこここに存在するという話。

1866年の「普通の初版」の方は、上記のAbeBooksのサイトによれば、数十万円から100万円ぐらいなので、まあ常識の範囲内と思いますが、それでもずいぶん高価なものです。

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「アリス」の物語は、作者ルイス・キャロル(1832-1898、本名Charles Lutwidge Dodgson)がオックスフォードの数学者だったこともありますし、個人的には、野崎昭宏氏の数学エッセイに、その理知的な諧謔がよく引用されていたこと、そして中学生の頃、すばらしく勉強のできる同級生が、会話の中で触れていたことが懐かしく思い出されて、私の中では単なる児童文学というよりも、すぐれて数理的な幻想譚のような印象が育っています。


そんなわけで、わが家にもアリスの本があります。
といっても、高価なものではありません。テニエルの挿絵に彩色をほどこして、『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』(初版1871)を2冊セットにした、アメリカのランダムハウス社から出た普及版(1946)です。




それと、グウィネズ・ハドソン(Gwynedd Hudson)の軽妙な挿絵に惹かれて手にした、Hodder & Stoughton社版(初版は1922年。手元のは「Centenary Edition」と銘打って、作者の生誕100周年を記念して、1932年に出たもの)。

こういうのは凝り出すとキリがありませんが、何せ「数理的世界」ですから、あまりモノにはこだわらずにおこうと思います。(と言いながら、それだけの経済力が伴わないのは、肝心の数理的世界から縁遠かったからではないかね…という苦い反省も一寸あります。)


(なお、表題で「アリス150歳」と書きましたが、主人公のアリスは7歳という設定らしいので、正しくは157歳かもしれません。)