星の林2016年01月03日 08時55分52秒

お正月らしく和の情緒を出します。

(和紙木版刷りの糸綴じ)

上はその中身が分からないまま、題名に惹かれて購入した本。
新春の運試しといったところです(この本は昨日届きました。今年の初荷です)。

タイトルは『狂歌 星のはやし
「星の林」といえば、万葉集所載の柿本人麻呂の歌「天の海に雲の波立ち月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ」が有名ですが、この本はいったいどんな中身なのか?

   ★

早速ページをめくると、この本は幕末~明治を生きた狂歌師「星廼屋輝雄(ほしのやてるお)」を会主として、明治29年(1896)初春に開かれた歌会の作品を編んだ、狂歌集のようです。

星廼屋輝雄―。 うーむ、実に素敵な名前です。
冒頭近くに書かれた伝を読むと、その本名は山田英胤、通称は庄蔵、文政4年(1821)の生れ。日本橋浪花町に住み、商いを業とし、若い頃から初代・星廼屋輝世の門人となり、初号は「芦廼屋一本(あしのやひともと)」。明治27年(1894)に、師の星廼屋を襲名し、二世・星廼屋輝雄となった…とあります。

(星廼屋輝雄肖像。「ながいきの恥多けれど甲斐ありて 孫彦星を見るぞ嬉しき」)


序に曰く、ひとつ星見つけて齢の長しとあふがるる星の屋の翁は、こぞの秋初(め)つかた、夕づつの影ほの暗く暁の星の光漸くうすれゆきしをかこたれしが、そのうき雲はいつしかに星の名におふ箒にや打払はれけむ、木がらしさそふ冬のあしたには…」

星尽くしのなかなかの美文。その趣旨は、明治28年(1895)秋口から病臥していた星廼屋翁が、幸い冬の訪れとともに本復し、その快気祝いを兼ねて狂歌の会を催すことになった…というものです。


当日の詠題は、「床上げ祝」「春の食物」「有名芸人」。
「床上げ祝」を詠むときは、特に上下二句の頭に「ほ」と「し」の字を置くべし…という趣向でした。


(五首目) 張って幾萬歳を祝はばや つづみうつ床上げの餅」


(一首目) 莱の千歳の鶴を友にせむ 百四病と仲違ひして」
 
  ★

ドイツの船員が大西洋上で満天の星をふり仰いでいた頃、日本の片隅では、こんな江戸時代そのままの「星を詠う集い」が開かれていたんですね。

しかし、この太平ムードはなかなか捨てがたいです。
120年経った日本においても、お屠蘇気分によく適います。

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