怪光線現る…理科室のX線2016年01月10日 16時57分52秒

昔(戦前)の理科室にはあって、今の理科室には決してないもの。
それはX線発生装置です。

【2016.1.12付記】  その後、X線装置は、今も現役の理科教具であることを知りました。したがって、上の記述は訂正が必要です。1月11日の記事のコメント欄を参照してください。

下は昭和12年(1937)に出た、島津製作所の理科教材カタログの1ページ。
中央上に載っているのが、「L形をなせる木製台に感応コイル、蓄電器、転極器、エッキス線管、管挟台、蛍光板及同保持器を装置したる」ところの「教育用エッキス線装置」で、金100円也。


そのほかX線管の単品が、直径80ミリから150ミリまで、大きさに応じて20円~40円、ドイツ製の高級品は、同じく直径100ミリ~150ミリの品が、45円~60円…と出ています。小学校の先生の初任給が50円の時代の話です。

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島津製作所では、それ以前、大正5年(1916)に、理化学器械使用法(増補改訂第5版)』という冊子体のものを出しています。これは小学校(尋常小学校、高等小学校)の理科実験指南書であると同時に、自社製品の販促も狙ったものですが、これを見ると、「教育用エッキス線装置」が、(なんと!)「尋常小学校之部」に登場します。

(X線装置の配線説明図。島津製作所、『理化学器械使用法』より)

暗室内でX線管からX線が放たれると、そばに置かれたシアン化白金バリウム板が蛍光を発して輝き、その間に人の手や、いろいろな物を入れた小箱を置けば、X線の透過度に応じてバリウム板に物の影が鮮やかに浮かび上がり、子どもたちは大喜び…という実験だったようです。

この冊子でX線装置と並んで紹介されているのは、電鈴や電話機、発電機などで、そこには「電気を応用した科学の発明品」という以上の共通点はありません。

当時は、X線の理論など全部すっ飛ばして(そもそも理論が未完成でした)、単なる生徒を喜ばせる「おもしろ実験」や「理科手品」の一種として行われていた気配が濃厚です。

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昨日の記事で引用したThe Cathode Ray Tube siteのページにも、「家庭での娯楽用X線管」という題目で、

「こうした比較的小さなX線管は、学校用または家庭での娯楽目的のために使われたもので、小型の誘導コイルやウィムズハースト静電発生装置といっしょに、物理実験セットの一部として販売されていた。当時のカタログから採った下の図は、こうしたX線管が、どのように使われたかを示している」

…という記述があり、手の骨を覗き見たり、写真に撮っている男の絵が載っています。

X線の人体への影響は、1920~30年代にかけて徐々に認識されてきたようですが、それ以前は、理科教育に熱心な先生がいた学校ほど、子供たちが理科室でバンバン放射線を浴びていた可能性があります。実に危なっかしい話です。

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とはいえ、X線管は理科室の歴史において無視できない役者なので、私も1つ手に入れました。


これまでは部屋の隅に漫然と置かれていただけですが、この機会にしげしげと眺めてみることにします。

(この項つづく)

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