回る世界地図(前編)2016年01月26日 06時38分17秒



ぬう…理想と現実はかくまで違うものか。

しかし、ここで注意しなければならないのは、モノの魅力は、その値段に比例しないことです。このアストロラーベ風地図(右側)は、絢爛豪華な天文時計(左側)のおよそ1000分の1の値段ですが、その妙味までもが1000分の1というわけではありません(おそらく)。

そして、利休居士が日常雑器に侘び茶の美を見出したように、そして高級ガトーよりも無性に駄菓子を食べたくなるときがあるように、わびし気なものは、時に不思議な魅力を発揮し、我々を惹き付けてやみません(おそらく)。

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…と、強がりを言って、無理やり話を貧しい方向に持って行きますが、上のアストロラーベ風地図を見て、ちょっと駄菓子めいた風情の品を思い出しました。


■松本安雄(著)
 『回る世界地図―世界対照時刻計―』
 霞ヶ関書房、昭和26年(1951)

戦後、まだ日本が占領下にあった時期に出た出版物で、紙質はザラッと粗悪ですが、妙に明るくカラフルです。


上の表紙自体、世界各地の地方標準時と、イギリスのグリニッジを基準にした世界標準時との差を表わす地図になっており、紙の使い方に無駄がありません。でも、これが「回る世界地図」だというわけではありません。その本体は、この中にあります。


くるっとひっくり返すと、裏表紙は「毎月の地球と四季」の説明図になっていて、これまた無駄がありません。


東大教授の鏑木政岐先生も、「地理的天文学的事象を極めて簡単明瞭に会得せしめ、教えるに便利、学習に調法なすばらしい考案で教育上の効果は絶大である」と推薦の辞を寄せる、その正体とは?

(「駄菓子」の魅力を追い求め、この項つづく)