夢の望遠鏡、望遠鏡の夢2016年02月17日 19時36分48秒

来たる2016年3月13日は、日本のアマチュア天文家&望遠鏡愛好家にとって、記念すべき日になります。いや、日本ばかりでなく、世界中のファンにとってもそうでなるはずです。

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天文趣味の一大特徴は、星への愛とともに、機材への愛がうずまいていることです。
必ずしも全ての天文ファンが…というわけでもないのですが、リアル天文愛好家(望遠鏡で実際に星を眺めて楽しむ人)のうち、少なからぬ割合の人が、少なくとも一度は望遠鏡愛に目覚めたことがあるはず。これは、写真愛好家が同時にカメラマニアになるのと類似の現象です。

しかし、望遠鏡愛好家のその後のライフコースは様々です。
早くに熱が冷める人、ほどほどのところで落ち着く人、そして一生かけて機材愛を貫く人。そして、その陰で、あまたの望遠鏡が廃棄され(いちばん最後の幸福なパターンにしても、ご当人が亡くなられた後、その機材愛がご遺族に受け継がれる確率はきわめて低いのです)、貴重な光学文化遺産は日々失われつつあります。

この点は、各地の公立・私立の天文観測施設でも事情は同じです。機材の更新に伴う旧機材の廃棄もあれば、財政難によって施設が閉鎖され、大型望遠鏡が無用の長物化する例も、近年決してまれではありません。

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こうした現状を憂えた人々が、「一般社団法人・天体望遠鏡博物館」を組織し、会員諸氏のボランティア精神に支えられた息の長い取り組みの末に、ついに現実の「天体望遠鏡博物館」が、このたび開設されることになりました。


■天体望遠鏡博物館公式サイト
 http://www.telescope-museum.com/

ロケーションは香川県さぬき市。徳島との県境に近い山ふところに立つ旧・多和小学校(2012年閉校)の校舎が、来月13日、天体望遠鏡博物館として甦ります。

同館代表理事の村山昇作氏は、元日銀マンという異色の経歴のアマチュア天文家。その周囲で活動を支えてこられたのも、みなさん本業を別に持つ、熱心なアマチュア天文家の方たちと聞き及びます。まさに天の時、地の利、人の和、そのすべてが備わった末に成し遂げられた壮挙です。

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この快事は、海外でも大きな注目を集め、アメリカを中心とするアマチュア天文家の交流サイト「Cloudy Nights」の今日の記事でも大きく取り上げられています。以下は、David McGough氏による同博物館訪問記。その写真を見るだけでも、同博物館の一端に触れることができます。この記事は、先ほど Antique Telescope Society のメーリングリストでも配信されたので、今後、多くの人の共感を呼ぶことでしょう。