天界の美、書物の美(2) ― 2016年02月23日 20時55分06秒
この本は、少し後の時代に量産された天文啓発書とは、ちょっと違うスタイルを採り入れています。それは、本全体が講演会の形式を意識したものであることで、これは著者・ブラントの肩書が「天文学と自然哲学(=科学)の講演家」であることからも、予想されるところです。
講演会は19世紀のイギリスにおいては、至極ポピュラーな娯楽で、都市の劇場では夜毎に講演会(その題目はさまざま)が開かれましたし、地方にも巡回講演家が回って来て、学校や公会堂で弁舌をふるいました。要は後の映画のような役割を、講演会は果たしていたのです。
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書物を飾る図版は、普通なら「図版1、図版2(Plate I、Plate II)…」と呼ばれますが、本書では、ことさらに「第1景、第2景(Scene I、Scene II)…」という言い方をしています。
そして冒頭の第1景には、「読者はここで聴衆に向って語りかけている講演者と見なされている」と註が付いています。つまり、「以下に書かれた説明文を、ご自分が講演家になったつもりで読み上げてご覧なさい」というわけです。
当時の講演会では、聴衆の興味を惹きつけるために幻灯機が好んで使われましたが、本書の挿絵も、まさに幻灯スライドをそのまま図版に起こしたもので、結局のところ、本書は「紙上講演会、紙上幻灯会」と呼ぶにふさわしい性格の本で、そのことは著者自身が序文の中で述べています。読者は、本書の挿絵が舞台に大写しになったところを想像しつつ、そこに添えられた「口上」を読み上げれば、著者・ブラント氏の講演会を、家庭で居ながらに体験できる…という仕掛けです。
「〔…〕本書の助けがあれば、今後、お茶の間や客間の炉辺を離れることなく、ご自宅で壮大な『天空の美』をお楽しみいただけます。しかも、ご家族団らんの場で、天文学について何の予備知識もなしに、天空の偉大で優れた真理と現象に関する知識を、自ら学べるのです。叙述を追って振られた数字の並びにしたがい、各情景を示しながら、親御さんや先生、あるいはお仲間内のどなたでも結構です、ぜひ本書のレクチャーを声に出して読み上げて下さい。これほど理性的な、あるいはよく整った心にとって、これほど愉快な宵の過ごし方はありますまい。」 (序文より)
さて、こんな心構えで、美しい石版に仕上げられた情景を眺めてみます。
本当は「口上」も訳出すると、いっそう味わい深いのでしょうが、各口上は1ページ、2ページ、ときにはそれ以上の長文なので、ここでは割愛します。(当時の講演会は、今のパワポを使ったそれよりも、ずいぶんゆったりしていて、あくまでも口舌が主、映像は従だったと想像されます。)
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以下、タイトルのみ。
第3景「地球の形と大きさ」
第4景「惑星系」
第17景「三日月」
第18景「半月を過ぎた頃合い」
第21景「惑星の大きさの比較」
(あんまりゾロゾロしすぎても良くないので、この辺で記事を割ります。以下、さらにゾロゾロ続く予定。)
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