平行世界2016年03月03日 20時48分41秒

どんなに大地が動こうが、火口から溶岩が噴き出そうが、
単にそれだけならば、人間には無害です。

―それが1万年、1億年かけて生じる出来事ならば、という条件付きですが。
そして、それが1分、1秒で生じるとなると、途端に人間生活に干渉してきます。

   ★

昨日書きたかったのは、異なるスピードで時の流れる世界が並存している不思議さ…みたいなイメージでした。でも、よく考えたら、これは自分の頭で考えたことではなくて、昔、小説や漫画で読んだ記憶が残っていたのだと思います。

すぐに思い出すのは、たむらしげるさんの短編作品「クジラの跳躍」です。

(河出書房新社刊 『水晶狩り』 所収)

人間には感じ取れぬほどゆっくり波打つガラスの海。
空中で静止したトビウオの群れ。
何日もかけて徐々に海上に姿を現す巨鯨。
その姿を一目見ようと集まる群衆。


同じ海には大型客船が浮かび、「彼ら」とは異なるタイムスケールで生きる人々が乗っています。そんな人々の視界を一瞬かすめて跳んだクジラ。


   ★

たむらさんが描きたかったのは、何かの寓話というよりは、一個の美しいイメージだと思いますが、考えてみれば、すぐそばにいるのに、決して言葉を交わすことのない人、お互いの存在すら意識しない人は大勢います。この物語が心に残るのは、そういう生の真実を捉えているからでしょう。

クジラの跳躍を、かりそめのことと思う人もいれば、永遠と感じる人もいる。
クジラは「震災」の隠喩にもなるし、他にもいろいろなメタファーとなって、そこに新たな意味を付与することができます。(でも、こういうのはあまり理屈で解釈してはいけないかもしれません。)

   ★

ちょっと見方を変えると、「異なるスピードで時が流れる世界の並存」は、この宇宙ではごくありふれた光景です。電車に乗っている奥さんと、家で帰りを待つ旦那さんでは、腕時計の進み方が違うことをアインシュタインは説き、これまでの実験結果は、全てその正しさを裏付けています。(原子時計を使わなくても、その正しさは容易に体感できます。)

(何だか要領を得ませんが、このところ頭がいつもボンヤリします。)

コメント

_ S.U ― 2016年03月04日 08時42分49秒

>原子時計を使わなくても、その正しさは容易に体感できます
 ははは。このへんが、アインシュタインと相対性理論に対する一般からの絶大な支持の理由かもしれませんね。
 「アインシュタインさん、実は私もそうじゃないかと思ってたんですよぉ」
というような感じで。

_ 蛍以下 ― 2016年03月04日 14時21分47秒

>すぐそばにいるのに、決して言葉を交わすことのない人、お互いの存在すら意識しない人は大勢います

ホントですね。我々は繋がっているのか、孤立しているのか。
<お互いの存在は意識していても言葉を交わさない>ケースもありますね。同窓会で交わされているであろう「あの頃好きだった」「言ってくれればよかったのに」といった会話もまた、大げさに言えば生の真実のひとつでしょうか^^

クジラではないですが、昨日は標高500m位の尾根を歩いていた私の気配に驚いた牝鹿が、藪から目の前に飛び出して来て、走り去っていき驚かされました。<お互いの存在を突然意識させられる>ケースですね^^
まだ小鹿だったので、彼女にとっては私が初めて見る人間だったかもしれません。

_ 玉青 ― 2016年03月04日 20時19分13秒

○S.Uさま

まあ、普通に暮らしていれば、時間が伸び縮みするのはごく自然だと思うんですが、それが自然と感じられなくなったところに、近代人の悲劇はあった…とか何とか、また話を膨らませると、発散して収束しなくなりますから、ここは無理に収束させましょう。

○蛍以下さま

小鹿の瞳の奥で突如結ばれた蛍以下さんの姿。
そして蛍以下さんの瞳の奥で結ばれた無垢な小鹿。
早春の尾根で交錯する2つの世界。
おそらく2個の存在は、互いにそれを一生忘れることはないでしょう(違いますか?)。
ええ、これこそが生の真実です。

_ S.U ― 2016年03月05日 08時34分33秒

>時間が伸び縮み
 これは、時々議論させていただいている(なんというんだったでしょうか)「民間人の感覚的先端科学」の中でも最たる興味のある課題ですから、また時を変えてところを変えて神出鬼没の蒸し返しをさせていただきたいと思います。

 これとは別に、私は「平行世界」を物理の実験で科学的に検証する野望的構想を持っているのですが、これもまだ道が遠いのでまた別の機会といたしましょう、

_ 玉青 ― 2016年03月05日 08時46分31秒

>「平行世界」を物理の実験で科学的に検証

ええっっっ!
S.Uさんが仰るのですから、それは本筋の話ですよね。
かつぐんじゃないですよね?(笑)
いずれにしても、続報をお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

_ S.U ― 2016年03月05日 15時55分18秒

 物理の実験という意味では本筋の話でございますが、それ以上のことは、「かつぎ」じゃないかとか続報があるかどうかということを含めまして、現時点ではまだ何とも申し上げられません(笑)。

_ 玉青 ― 2016年03月06日 16時10分55秒

むむ、これは…
用心しいしいお待ち申し上げることにいたしましょう。(笑)

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