ダメ。ゼッタイ。2016年03月20日 15時49分21秒

世の中には「8・2の法則」というのがありますね。

つまり「結果の8割は、2割の要素が決める」という経験則で、例えば要点をしぼって勉強すれば、全体の2割覚えただけで80点とれるとか、会社の利益の8割は営業成績上位2割の社員が上げているとか、ホントかウソかは知りませんが、そんなような内容で、提唱者の名をとって「パレートの法則」ともいうそうです。

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コレクションの場合も、ジャンルごとにいわゆる「must have」アイテムがまずあって、その周辺をベーシック・アイテムが取り巻き、さらにその外側にマイナー・アイテムがロングテール状に存在する…みたいなイメージがあって、中核の2割を集めれば、コレクターとしての満足感・達成感は、8割がた得られるような気は確かにします。

おそらく、そこで踏みとどまるのが人として穏当な、賢い生き方なのでしょう。
さらに10割の満足感を得ようと思ったら、残り2割のために、それまでの4倍もの苦労を重ねなければなりません。これは確かに常軌を逸しています。でも、コレクター気質は本質的に狂気をはらんでいるので、往々にして彼らはその茨道を歩もうとします。

以前も書いたように、私自身は別にコレクターではないんですが、漫然とモノを買い続けているうちに、最近ついに「2割の線」を越えた自覚があります。まあ、これは一種の自慢の裏返しで、本人は悪いこととはちっとも思ってないんですが、ただこの先は長いぞ…という予兆を感じて、改めて身の引き締まる思いです。

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…とか何とか、ここまでは実にオメデタイ話で、「馬鹿な奴だ」の一言で片付きますが、ここで私は世人に強く注意を喚起しておきたいことがあります。

上述の購入量と満足感の比をとれば明らかなように、最初は1つのモノを買えば1、あるいは「must have」アイテムなら、3とか4の満足感があったのに、「2割の線」を超えると、得られる満足感が「零コンマいくつ」に急速に薄まってきます。したがって、昔と同じ満足感を得ようと思ったら、3つも4つも買わないといけないことになりがちです。

そのせいで、本人も何かおかしい…と感じながら、どこがおかしいのか気づかないまま、強迫的に蒐集(購入)を続けている例が、世間には少なくないと睨んでいます。

これはまさに、より大量の、より強い薬物を求める薬物中毒者と同じ状態です。
徐々に耐性が形成されて依存症状が強まる―。

背後にある生理的メカニズムは全く違いますが、症状としてはそれに類したことが蒐集行為にも伴うわけです。ここに蒐集行為の大きな危険性があり、世のコレクターに警鐘を鳴らしたい点です。

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蒐集物を家族に隠す。
モノが増えてないと嘘をつく。
蒐集のことを考えて仕事がおろそかになる。

…というのは、依存症に典型的に見られる行動で、こうなるとちょっと本気で心配しないといけません。

コメント

_ S.U ― 2016年03月21日 10時28分38秒

ははは、物騒な話ですね。確かに笑い事ではないかも。

 コレクションにおいては、残りの一部の入手が恐ろしく困難になっているのがあって、子どもの頃これを悪用したシールのコレクションがありました。お菓子の付録のシールを6種類集めると景品が貰えたのですが、1種類だけはたいへんレアであるという悪どい商売になっていました。友だちのコレクションと比べて子どもでもそのカラクリが判別できたのですが、それでも脱却することはできませんでした。これが今でも私の行動の潜在的な教訓になっているかもしれません。

 コレクション依存症の識別法は面白いですね。さらに治療が必要な重度になると、

・コレクションのことで、家族や友人と口論になったことがある。
・仕事を急にキャンセルして休んだことがある。
・他人から、コレクションさえしなければいい人なのに、とよく言われる。

などというのはどうでしょうか。

_ かすてん ― 2016年03月21日 12時14分18秒

>残りの一部の入手が恐ろしく困難になっているのがあって、子どもの頃これを悪用したシールのコレクションがありました。

 S.Uさんのこれを読んで、私にとってのそれはウルトラマンのチョコレートだと思いましたよ。他の怪獣のカードは何ペアも集まっているのに、ウルトラマンだけがどうしても出ない。出ない。まだ出ない、、、。ラジコンカー欲しさにいくつチョコレート買ったことか。まぁ、子供ながらこのからくりにはすぐに気付き、出る確率が知らされていないくじにはのめり込まなくなりましたので、それはそれで良かったのかもしれません。

自分は執着心が希薄という弱点があるので、コレクション力はないですね。他人のコレクションを眺めながら「趣味とは他人には理解しがたいところのあるもの」と思っていますが、社会生活が破綻するところまで行っては元も子もないですね。

_ 玉青 ― 2016年03月21日 18時07分03秒

○S.Uさま & かすてんさま

いやあ、「はまる」というのは本当に怖いですね。

S.Uさんが挙げられたcriteriaは、すでに社会生活に支障を来している状態なので、はっきり「アル中」ならぬ「コレ中」と言っていいと思います。アルコール依存症の場合は、医学的治療と並行して、「断酒会」のような自助グループに参加するのが効果的とされますが、コレクターの場合も「断集会」を組織して、社会的リカバリーを支援する取り組みが今後必要になるかもしれません。とにかく依存症は、個人の意志の力でどうにかなるようなものでないことは確かです。

それにしても、昔の大人もずいぶんアコギな商売をやってましたねえ。
子供のなけなしの小遣いを搾り取って恥じないとは、非道い話です。
でも、今はオンラインゲームとかで、より大がかりにやってるらしく、本当に油断も隙も無い世の中です。アイテム蒐集にのめりこんだ子供や大人が散々搾り取られて、それが社会問題化しているというニュースを読みました。ネットリテラシーと並んで、依存のメカニズムとかも、学校で早めに教えるべき重要事項なのでしょうね。

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