九谷を愛でる2016年03月22日 20時48分26秒

今日もマイナーな話題を続けます。

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先日、九谷焼の皿を買いました。
なぜ「天文古玩」に陶芸の話題が出るかといえば、それは通り一遍の皿ではなく、そこに濃厚な天文古玩的味わいを感じたからです。


直径約16センチの小ぶりの皿。
見込み中央に書かれた文字を見ると、昭和58年4月25日に焼かれたもののようです。


青、緑、黄、紫…いずれも九谷の基本色ですが、同じ焼成条件でも、釉薬の調合によって実に多彩な表情を見せてくれるものです。まさに釉薬のパレット。


各色の脇には、化学式や配合比の詳細なメモが焼付けてあり、陶芸家はこういう研究を日々続けているのかと、まざまざと知りました。
すぐれた陶芸家は、一面すぐれた研究者でもあるのですね。

素材の調合を変え、焼成を繰り返し、理想の発色を求める。
青色ダイオードの開発時もそうでしたし、新しいものを開発する過程では、多かれ少なかれ経験するプロセスでしょう。


でも、この皿はそうした理屈をぬきにしても、やっぱり美しいです。
白地に映える色のグラデーション。余白に書き込まれた筆跡。
総体として美しいと感じます。


「理科趣味陶芸」というジャンルが仮にあるとすれば、これこそ、その優品。
中島誠之助氏のお得意のセリフが耳元で聞こえてくるようです。