秋の星座早見とその秘密2016年03月27日 07時57分11秒

昨日のおまけ…というわけでもないですが、Mang 社の古いタイプの早見盤を載せます。


昨日の早見盤が早春のイメージとすれば、このシックな黒と臙脂のコントラストは、ちょっと晩秋をイメージさせます。


附属の説明書を見ると、この古いタイプにも、本来2本の目盛りバーと日月マーカーが付属していたはずですが、手元の早見盤からは失われていて、代わりに鋼の薄板を加工したバーが1本、割ピンで取り付けてあります(以前の持ち主の手わざでしょう)。


(裏面)

完品の状態は、昨日の参考ページに挙げた、トマス・サンドベリ氏(スウェーデンの恐るべきコレクター)のサイトに、写真入りで紹介されていますが、そちらはマホガニー製のスタンドまで付属していて、非常に堂々としています。

時代的には、氏が言うように、1900年前後に売り出されたものと思いますが、手元の解説書には1917年の表記があるので、その頃までは製造が続いていたようです。
(…となると、昨日の新バージョンも、「1920年代」というよりは、「1920~30年代」と幅を持たせた方が安全なので、そのように訂正しておきました。)


   ★

ときに、この早見盤。
日月マーカーの存在以外にも、きわめて特徴的な点があることを、昨日のコメント欄で、S.Uさんにご教示いただきました。

(日本天文学会編の三省堂版星座早見より、オリオン座が南中した空)

上が普通の早見盤の星座表示です。


そして、こちらがMang 社の星座表示。

どうです、お分かりになりますか?
天の川の流れる向きで一目瞭然ですが、Mang 社の早見盤は、図柄が左右逆転しています(つまり、天球儀や一部の古星図と同様の表示方式)。

それが何故かというのは、昨日のコメント欄にも書いたように、Mang 社の早見盤は、普通の早見盤のように頭上にかざして使うのではなく、普通に手に持って、上から見下ろすように使うからだ…と思います(解説書にはその辺の説明があるはずですが、残念ながら読めません)。

他にも探せば類例はあるかもしれませんが、かなり珍しいタイプであることは確かで、星座早見盤史を編む上で、これは落とせぬ品ではないでしょうか。