エジプトの星2016年05月03日 09時13分06秒

どうも黄金週間と云いながら、いろいろ口に糊するための苦労が多く、まぶしい青葉も今ひとつ目に冴えません。
そんな状況なので、手っ取り早く、いちばん最近手元に来たモノを載せます。


妙にごつごつトゲトゲした、黒っぽい塊。
差し渡しは約2センチですから、指でひょいとつまんで、口に放り込めそうです。

昨日、買い物のついでに、東急ハンズをブラブラ歩いているとき見つけました。
これが何かというのは、付属のラベルに書かれていますが、要はいったん形成された白鉄鉱の結晶が、外形はそのままに、時間経過の中で成分だけ赤鉄鉱に置き換わった、いわゆる「仮晶」だそうです。


エジプト特産なので、通称は「エジプトの星」。

初めてその名を見聞きしましたが、見るなり、私の連想が足穂の「星を売る店」に飛んだのはもちろんです。あそこに出てくる「星」もやっぱり、指先でつまめるぐらいの大きさで、金平糖のような形をしていました。

ただ、作品に出てくる星と違うのは、あちらはキラキラと色鮮やかに輝いているのに、こちらはチョコレート細工のような黒褐色をしていることです。それに、足穂の星はエチオピアが原産で、それをエジプト人商人が売りさばいているという設定でしたが、こちらは最初からエジプトで採れるそうなので、ひょっとしたらエチオピア産を真似て、エジプトで抜け目なく模造したのかもしれません。

…というふうに、だんだん現実とフィクションは入り交じり、今の季節、「青々と繁ったプラタナスがフィルムの両はしの孔のようにならんでいる山本通りに差しかか」れば、きっと海からは涼しい風が吹いているでしょうし、南京町では怪しい手品師が妙な口上を述べているはずですし、そして山手の一角では、ショーウィンドウに青い光が満ちた「星を売る店」が、今日もひっそりと店を開けているにちがいないと思うのです。