さあ、魔法で宇宙の旅へ(後編)2016年08月23日 06時49分21秒

本を紹介するといっても、例によって言葉の壁があるので、挿絵をざっと見るだけでお茶を濁します。


天文入門書の常道として、旅は身近な月世界から始まります。
巨大なクレーター、峩々たる山脈、頭上に浮かぶ地球…そんなものに、チルリーは驚きの目を向けます。


火星を過ぎ、木星も超えて…


土星へ。そこから振り返るまばゆい太陽。
好奇心が強いのはチルリーだけではありません。他にもいろいろな子どもたちが、天界めぐりを楽しんでいます。


間近で見る、白く輝く彗星。彼女もまた天界の旅人です。


太陽系の名所を一通り見た後は、さらに遠い恒星世界に目を向けます。
空を埋め尽くす、にぎやかな星座たち。


無数の星が連なる天の川。

現在であれば、ここからさらに遠く遥かな、銀河系外の世界にチルリーたちは向かうところですが、彼らの旅はここで終わっています。この愛らしい本が、1935年という時代の制約を受けていると感じる点です。


目覚めればそこは元の草原。日は相変わらずうららかで…という、「不思議の国のアリス」的な夢オチのストーリー。

  さあチルリー、目を開けなさい。
  妖精ジンはもう行ってしまいましたよ。
  美しい旅も終わりです。
  こうしてこの上なく美しい夢は終ったのです。

   ★

80年前のフランスの子どもたちが見た、美しい夢のかけら。
80年経った今、宇宙の理解は桁違いに進みましたが、子どもたちの幸せも桁違いに増進したかと問われれば、ちょっと切ないものがあります。

コメント

_ S.U ― 2016年08月23日 18時03分29秒

絵を見る限りでは、何というか、屈託のないというか、畏れの感触のない絵本ですね。これがフランスの伝統なのでしょうか。日本の本の昔の月面の山は、無駄に尖っていたりして恐ろしげでしたが、こちらは妖精のおかげで小さい子どもでもへっちゃらのようです。

 この1935年というのはナチス・ドイツが軍備復活を宣言した年で、その4年後には戦争が始まりました。夢を膨らます子どもには大人は平和な世界で答えてやる必要がある、絶対そうでなければならないと思います。

_ 玉青 ― 2016年08月24日 21時01分40秒

ええ、ぜひ。
子どもが夢を膨らませることのできる世の中を作ることこそ、大人にとっての夢であり、汗をかくに足る目標だと思います。

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