天文古書の表情ということ2016年09月04日 13時41分16秒

(昨日のつづき)

今回、池袋に何冊か天文古書を持ち込みました。
以下はそのうちの3冊。


いずれもドイツの本です。




どれもドイツらしい、硬質な「星ごころ」に満ちた良い表情の本だと思います。


3冊を並べたところ。
池袋の展示では、特に言及しなかったので、気づかれなかった方も多いと思いますが、改めて目を凝らすとお分かりのように、実はこの3冊は同じ本です。
即ち、オットー・ウーレ(Otto Ule、1820-1876) が著した、Die Wunder der Sternenwelt(星界の驚異)

ウーレは専門の天文学者というよりも、一種の科学啓蒙家で、地理学や物理学の本も書いていますが、中でもこの『星界の驚異』は好評を博し、著者の死後も、後の人が筆を入れながら長く版を重ね、読み継がれました。

上の3冊はいずれも著者の死後に出たもので、左から1883年の第3版、1900年の第5版、そして1923年の第7版になります。さらに、今回は持参するのを忘れましたが、下が1860年に出た初版。


19世紀半ばから20世紀前半にかけて、美しい天文書がたくさん生まれましたが、こうして全く同じ本のデザインの変遷を見ていると、それぞれの時代で宇宙に寄せる思いの変化や、何をもってカッコイイと感じるかという美的感覚・造形感覚の違いを、はっきり読み取ることができます。

まさに天文書も世につれ…の感が深いです。

(この項つづく)