蚤(ピュス)ゲーム 再考2016年10月19日 07時05分59秒

唐突ですが、懐古&回顧モードで、長野まゆみさんのことに話題を横滑りさせます。

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以前、長野氏の『天体議会』を取り上げ、作中に出てくるモノを考察するという、我ながら閑雅な試みをしましたが、そこに「蚤(ピュス)ゲーム」というのが登場しました。

天体議会の世界…蚤〔ピュス〕ゲーム(1)(2)
 http://mononoke.asablo.jp/blog/2013/08/20/6952680
 http://mononoke.asablo.jp/blog/2013/08/22/6954016

記事で取り上げたのは、フランス製のピュスゲームで、チップをはじいてボード上の「上がり」を目指す遊びでしたが、その遊び方とゲーム史をめぐって、コメント欄では長大なやりとりがあったのでした。

ただし、ピュスゲームには、もっと単純な遊び方――すなわち、チップをはじいてカップインさせるというのもあります。そちらはあまり触れませんでしたが、『天体議会』のメインキャラである水蓮が遊んでいたのも、カップインさせるタイプですから、それについても一瞥しておきます。

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ふと、そんなことを思いついたのは、下のようなゲームを最近手にしたからです。

(箱の大きさは、タテ横約8.5cm×12cm)

石版刷りの箱絵からして時代を感じますが、おそらく1910年代の品。
タイトルにはTidley Winks とあって、ピュスとはうたってませんが、これは英語とフランス語の違いで、遊びとしては同じものです。(Tidley Winksとは「おはじき」の意。直訳すれば「ほろ酔いのウィンク」?)

これは英米向けの輸出仕様なので、英語表記になっていますが、メーカーはドイツ・バヴァリア地方を本拠とするSpear社で、バヴァリアと聞けば、足穂チックな連想も働きますし、そんなところも『天体議会』の世界と親和性が高い気がしました。


箱を開けると、ボール紙製のカップと、白・黒・赤・黄・緑の5色のセルロイド製チップが入っています。各色とも、大きいチップ(20ミリ径)は1個、小さいチップ(15ミリ径)は3個あって、プレイヤーは箱絵のように、大きいチップで小さいチップをパチンとはじき飛ばして、カップに入れる技を競う…というのが、ゲームの狙いです。


説明書を読むと、プレイヤーはめいめい好きな色のチップを選びなさい、そしてチップがよく飛ぶようテーブルにはクロスを掛けなさい…という指示に続いて、2種類の遊び方が紹介されています。

すなわち、各プレイヤーが順番にチップをはじいて、最もたくさんカップインした人が勝ちというのと、丸テーブルを囲んだプレイヤーが一斉にチップをはじいて、最初にカップインした人が勝ちというのと、2つのルールがあったようです。

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水蓮が一人で遊んでいたのは、「白磁のチップを容器めがけて指ではじき、チップの色や形で点を数える」というもので、チップを指ではじくところも、点取りの仕方も、上の2つの遊び方とはまたちょっと違うので、この件はさらに考究を続けねばなりませんが、ピュスゲームの外延は少しずつ見えてきた気がします。

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蚤の慣用句を検索したら、まっさきに「蚤の息も天に上がる」というのが出てきました。
蚤のような取るに足りないものでも、一心に努力すれば何事もなしとげることができるたとえ」だそうです。蚤もなかなか馬鹿にはできません。

コメント

_ S.U ― 2016年10月19日 19時19分35秒

 ピュスゲーム、前回は大ごとでしたね・・・

この箱のバーミリオンは、足穂が好きだったバワリア製色鉛筆を連想させてくれます。

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