古紙復活2016年11月18日 07時28分59秒

今日は天文とは関係ないですが、古玩とは関係のある話題。

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小さな紙物や古絵葉書を買うと、商品が途中で折れ曲らないよう、他の絵葉書を台紙代わりに同封してくれることがあります。向こうも廃物利用のつもりだろうし、こっちもたいていは捨ててしまいます。


先日も、アビニョン教皇庁の絵葉書が台紙代わりに入っていました。
セピア色に変った石版の古葉書です。ありふれた観光土産で、そこに特段の価値はないのでしょうが、何しろこの場合、台紙の方が買ったものより古かったので、ちょっと捨てかねました。

こういうのを見ると、「売り手の目こぼしで、いつか思わぬ珍品が台紙として入ってた…なんて幸運もないとは言えんぞ」と、虫のいいことを考えますが、まあ向うも商売人ですし、それが実現する可能性は、限りなくゼロに近いでしょう(でもゼロではありません)。

現に、世の中には紙背文書(しはいもんじょ)とか、漆紙文書というのがあって、再利用された反古紙から、重大な歴史資料が発見された…なんてことも実際あります。

まさにリユース万歳ですが、ここで以前買った古楽譜のことを思い出しました。

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私は楽譜が読めないくせに、古い楽譜に強く惹かれます。
単純な古物としての魅力に加え、音という形のないものに形を与える不思議さ、そして音の理論はピタゴラス以来、数学と結びついているので、そのグラフィカルな表現に、クールな数理的世界を感じる…というのが、その理由でしょう。


たとえば、羊皮紙に書かれたこの四線譜。
これは私が持っている楽譜の中ではいちばん古いもので、現代の楽譜と違うのはもちろん、グレゴリオ聖歌のネウマ譜とも違った形式を備えています。


調べてみると、この釘頭型音符は、14世紀以前のドイツで用いられた、ゴチック式のものだそうです。


で、この楽譜で気になったのは、その下部に直線状の切れ込みが入っていることです。

最初、その意味が分からなかったのですが、その後、西洋でも日本と同じく、古い羊皮紙を(特に装丁材料として)再利用することが少なくなかったと知り、これもそれかと気づきました。

(ネットオークションで見かけた別の例。これもおそらく本の補強材料として使われたものでしょう。それをまた誰かがはがして、こうして商品として流通しているわけです。)

いわば西洋版・紙背文書ですが、それがたどってきた遥かな道のりを思うと、「これぞ歴史だ」と、つくづく思います。

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リユースといえば、失敗したコピー用紙の裏を再利用している職場も多いでしょうし、チラシの裏を使うお年寄りも健在ですが、あれもいつか歴史の中でよみがえるのかどうか?これまた可能性は限りなくゼロに近いでしょうが、ゼロではありません。

(楽譜の裏面)