「ヴォルベルのこと」への補足 ― 2016年12月04日 10時32分19秒
【補足1】
星座早見盤を「アナログ計算機」と書きましたが、あんまり計算機っぽく見えないなあ…と感じる方もいらっしゃると思います。
星座早見盤の普通の使い方は、日付と時刻を合せて、そのとき空に見えている星座を知る…というものでしょうが、これは見方を変えると、日付と時刻から、各恒星の地平座標上の位置(方位と高度)を読み取っていることに他なりません。(実際、現在市販されている早見盤の多くは、地平座標を読み取りやすいよう目盛が入っています。)
(地平座標線が入った渡辺教具製の早見盤)
星座早見盤に可能なのは、星の見え方を知ることだけではありません。
特定の星が南中するのは今日の何時か、あるいは同じ星が午後7時に地平線から昇るのは何月何日か、早見盤を使えばたちどころにその答が分かります。
結局、このシンプルな装置の中には、日付・時刻・星の地平座標上の位置という、3つの変数の取り得る組合せが全て格納されており、円盤を回すことで、知りたい情報を自在に取り出せるという意味で、これは非常に高度で洗練された計算機なのです。
【補足2】
昨日、和式ヴォルベルとして密教占星術の本を載せましたが、天文学の本流からすれば、いかにも「変格」であることは否めません。でも、「正格」な作例もいろいろあります。
オランダ・バロック絵画と古地図・天文資料のコレクターであるtoshiさんについては、以前ご紹介しましたが、toshiさんはこの和式ヴォルベルに関しても、資料をいろいろ蒐集されていて、ご自身のブログ「泰西古典絵画紀行」(http://blog.goo.ne.jp/dbaroque)で、その見事な例を紹介されています。
発明の才にかけては、江戸の人もイスラム黄金時代やルネサンス期の人におさおさ劣らぬものがあって、ちょん髷を結った人が、こういうハイカラな道具をクルクル回している姿を想像するのは、ちょっと楽しいものです。
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