フィリップス問題(4) ― 2016年12月09日 06時47分15秒
今回の記事を書くために、先日しげしげと手元の星座早見盤を見ていたら、1つ重要な事実を見落としていたことに気づきました。
(フリルタイプの裏面)
(同上拡大)
それは、フリルタイプの裏面に「MADE IN GERMANY」の文字があることです。これは同じフリルタイプである南天用の早見盤を見ても同様です。
(左・北天用、右・南天用)
(南天用裏面)
これを見て、もうひとつモヤモヤしていたことに、はっきりと答が出ました。
(左・ドイツ語版、右・英語版)
それはすなわち、この英独の「そっくり早見盤」が、何故そっくりなのか?という点です。
(同上。言語を除けば、細かい点までそっくり同じです。)
結論を言えば、フリルタイプはフィリップス社のオリジナルではありません。その本家はドイツであり、フィリップス社はその版元である、ドルトムントのクリッペル社(A. Klippel)に、英語版の製造を委託していたに違いありません。いわゆるOEMです。
(ドイツ語版・裏面。中央上部に「A. Klippel in Dortmund」のメーカー表示)
私の手元にあるドイツ語版は、(本体に年代を示す記載はないものの)およそ1800年代末のものと思いますが、この時点ですでに26版(Sechsundzwanzigste Ausgabe)を重ねており、このタイプの早見盤に関しては、クリッペル社が、少なくともフィリップス社よりも10年は先行していたように想像します。
(ドイツ語版・部分。「年間常用星図・中央ヨーロッパ用/第26版」)
★
いっぽう、スクエアタイプでは、表示が「PRINTED IN GREAT BRITAIN」に変っています。
(中央下部に注目)
これはスクエアタイプから派生した、他の小型早見盤等でも同様です。
(小型早見盤と惑星の位置を示すポインターを備えた「Philips’ Revolving Orrery」)
(同上裏面・部分)
直接的な証拠は未だないものの、フリルタイプからスクエアタイプへのデザインの変更が、生産国の違いに因るものとすれば、それが生じた時期は、かなりの確度で推定できます。
すなわち、その背景にあったのは、第一次世界大戦(1914~1918)の勃発による、英-独間の貿易の途絶に、まず間違いなかろうと思います。それによって、フィリップス社は星座早見盤の製造拠点を、イギリス国内に移すことになったのでしょう。
(さらにこの項つづく。次回完結編)
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