ヴァーチャル雪見(2)2017年01月21日 11時44分54秒

(一昨日のつづき)

「ヴァーチャル雪見」と言っても、そう大した工夫があるわけではなくて、雪景色の幻灯スライドが何枚かあるのを、ちょっと眺めようという話。

(最近、この手のスライドは、厚手のクリアポケットに入れて仕舞ってあります)

手元にあるスライドは、みな同じメーカーの製品です。
欄外に振られた通し番号が飛び飛びなので、本当はもっとたくさんシリーズで売られていたと思うのですが、手元には8枚しかありません(2番から20番までのうちの8枚)。


いずれも、タイトルは「雪の景色 Snow Scenes」もしくは「霜と雪の景色 Frost and Snow Scenes」となっていて、メーカーは「G.W.W.」。

ネット情報を切り張りすると、この「G.W.W.」というのは、19世紀のスコットランドの写真家、ジョージ・ワシントン・ウィルソン(George Washington Wilson、1823 –1893)が、自らの写真販売のために起こした会社で、彼が撮影した美しい風景写真の数々は、幻灯スライドをはじめ、いろいろなフォーマットで流布しました。

その後、写真販売の仕事は、息子のチャールズが引き継ぎ、GWW社の製品が最も売れたのは1890年代だそうなので、手元のスライドも概ねその頃のものでしょう。

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写真家ジョージ・ウィルソンが居を構えたのは、スコットランドでも北にあるアバディーンの町で、以下に登場する被写体は、全てアバディーン内外とおぼしい冬の光景です。


この「ブリッグ・オ・バルゴウニー(殿様の橋、の意)」も、アバディーン郊外にある13世紀に作られた古い橋。今は飛び込みの名所で、度胸試しに橋のてっぺんから川に飛び込む人が跡を絶たないそうです。


雪というより、こちらは霜が主役かもしれません。
雪がこんもり積もっていると、むしろ暖かそうな印象を受けますが、これは冬ざれの、いかにも寒そうな光景。でも、陰鬱というのとはまた違う、白さに包まれた静かな明るさが感じられます。

(中央部拡大)

無音の世界。モノクロームの画面に漂う詩情。


こちらのスライドも、霜の光景を写したもの。
その証拠に、樹々は真っ白に化粧しているのに、地面は乾いています。
題して「Fairy Frost Work」。

(一部拡大)

過冷却状態の水滴が、風に乗って樹木に衝突し、そこで瞬時に氷結することを繰り返してできるのが「樹氷」。これは水が凍った、いわば「ふつうの氷」の塊です。

それに対して、上のスライドに写っているのは「樹霜(じゅそう)」。
霜というのは、空気中の水蒸気(気体)が、水(液体)を経過せず、物体の表面で直接固体化(昇華凝結)してできたものです。その過程で結晶成長するため、樹霜は樹氷と違って、雪と類似の美しい結晶形態を持ち、また風が吹けば容易に脱落します。
(…と、知ったかぶりして書いていますが、この辺はすべて本の受け売りです。)

(次回は霜から本格的な雪景色へ。この項つづく)