小さな天体観測家2017年01月24日 06時55分34秒

1冊の愛らしい星の本。


■Linda Whittier MacDonald
  『The Little Star-Gazer』
  The Murray Press (Boston), 1928. 77p.

星にあこがれ、星のことなら何でも知りたい少女・スー。そしてスーの先生役を務める、星に詳しいスー叔母さん。本書はこの2人のスー、すなわち「リトル・スー」と「アント・スー」のやりとりで進む星座入門書です。


こういう問答体の星座入門書は、他にもいろいろあると思いますが、本書の特色は、そのやり取りがすべて手紙で行われている点です。しかも、この設定は単なる作者の思いつきではなくて、現実に作者には星好きの姪がおり、彼女と手紙でやり取りした事実と文面が、本書の下敷きになっています。


本書を捧げられたマリオン・ガートルードというのが、件の姪御さんでしょう。
彼女はB.A.という立派な称号を有していますが、これは文学士(Bachelor of Arts)の意味ではなくて、「こども天文学者(Baby Astronomer)」の略。こんなところに、叔母さんの温かいユーモアがあふれています。

作者の住む東部ボストンから、7歳の姪が住む西部コロラドまでは、ざっと3,200km。その距離を越えて、幾たびも交わされた夜空の往復書簡集――。

何と心優しい話だろう…と思います。この本は別に美しいイラストにあふれているわけでもなく、どちらかといえば地味な本ですが、でもそこに流れる空気は、とても気持ちがよいものです。


こういう優しい心根に触れると、「アメリカは、なぜこれほど粗雑な国になってしまったのか?」と素朴に疑問に思いますが、でもトランプ候補(今はトランプ大統領)に投票した人たちが求めたものこそ、まさに「古き良きアメリカ」のイメージなのかもしれず、この辺はちょっと流れが複雑です。まあ、それにしたって、今のアメリカが子供に優しい社会かといえば、大いに疑問符が付くと思います。

(見返しに書かれた、著者リンダ・マクドナルドの自筆署名と献辞。相手がマリオンだったらなお良かったのですが、どうも贈り先は違うようです。)