空の旅(1)…神保町発、時の彼方へ2017年04月11日 22時18分38秒

先月下旬、神保町の三省堂で開催された「第5回 博物蒐集家の応接間」は無事に終わりました。

既報のように、私も antique Salon さんに誘っていただいて、お味噌参加したのですが、なかなか時間も乏しく、十分な準備ができませんでした。かと言って十分時間があれば、あれ以上のものができたかと言えば大いに疑問で、やっぱりあれが私の限界なのでしょう。

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会期中の場内の雰囲気は、主催者である antique Salon  さんによる以下のページでご想像いただけると思います。

■第5回 博物蒐集家の応接間 旅の絵日記 を終えて
こういう耽美な会場の隅に、ちょっと地味な一角があって、それが「天文古玩的旅イメージ」のコーナーなのでした。


これのどこが「旅」なのか?
ここで「旅人」になぞらえられているのは、「人類」ないし「天文学という知の営み」です。


「彼/彼ら」は、遠い昔、ユーラシアの一角で旅ごしらえをし、古代ギリシャでその足を鍛えると、イスラム諸王朝、インド亜大陸、中央アジア、東アジアをくまなく歩きまわり、ヨーロッパ世界でその旅装束を一新しました。(本当は南北アメリカにも、彼の兄弟がいるのですが、そちらには目配りできませんでした。)


その長い旅の果てに、再びギリシャの地に立ち寄った彼は、こんな記念の品を残しています。


1920~30年代に、ギリシャの学校で使われた天文掛図。
その傍らには、私の思い入れが、こんなキャプションになって添えられていました。

 「古代ギリシャで発達した天文学が、様々な時代、多くの国を経て、ふたたびギリシャに帰ってきたことを象徴する品です。天文学の長い歴史の中で、惑星の名前はラテン語化されて、木星は「ジュピター」、土星は「サターン」と呼ばれるようになりましたが、この掛図ではジュピター(木星)は「ゼウス」、サターン(土星)は「クロノス」と、ギリシャ神話の神様が健在です。」

この掛図を眺めているうちに、ふと上の事実に気づいたとき、私の心の中でどれほどの長い時が一瞬にして流れ去ったか。「やっぱり、これは旅だ。長い長い旅なんだ…」と、これは私の個人的感懐に過ぎませんが、その思いの丈を、しばしご想像願えればと思います。

(もう少し展示の話を続けます。この項つづく)