五月の鉱物 ― 2017年05月19日 06時53分02秒
芽吹きの季節を過ぎ、今は若葉の季節です。
あの透明感のある美しい若緑を、他のモノにたとえると…と考えていて、思いついたのは、緑玉髄(クリソプレース)の色です。
透明感はあるけれども、決して透明ではない、柔らかい緑。
明るく、みずみずしいアップルグリーン。
かつて宮沢賢治も、落葉松の新芽の色を、この鉱物にたとえました。
(『春と修羅』所収「小岩井農場 パート七」)
「から松の芽の緑玉髄」
(保育社版『原色日本植物図鑑 木本篇(Ⅱ)』より)
そして、「からまつの芽はネクタイピンにほしいくらゐだ」と書いたのは、やはりその色合いに宝石の美しさを感じたせいでしょう。
(「小岩井農場 パート三」)
賢治さんと緑玉髄の関わりは、板谷栄城氏の『宮沢賢治 宝石の図誌』(平凡社)に教えていただいたことですが、こうして改めてモノを並べてみると、何となくそこに賢治さんの心象が揺らめくようでもあります。
★
美しい緑の季節に不似合いな、どろどろしたニュースに胸が塞がる思いです。
でも、あの暗い時代に光を放った賢治さんの後姿を眺め、どこまでも広がる自然を前にすれば、これからだって歩いていかれないことはないぞ…と思います。
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