アンティーク望遠鏡、夢のオークション ― 2017年05月25日 06時55分27秒
アンティーク望遠鏡ファンのメーリングリストで、あるオークションの話題が流れてきました。オークション自体は、すでに先月の初旬に終っているのですが、アンティーク望遠鏡を主体とするオークションは珍しく、興味深く思いました。
そこで話題になったのは、故アラン・マレイ氏(Allan Murray、1943-2016)の蒐集になる個人コレクションの売り立てです。
マレイ氏はスコットランドで生まれ、主に香港で活躍した銀行家。
氏はスコットランド絵画に焦点を当てた美術コレクターであると同時に、天文趣味の徒として、古い望遠鏡の蒐集でも名をはせました(さらにその旺盛な好奇心は、古い科学機器全般の蒐集へと、氏を駆り立てました)。
その膨大なコレクションは、氏の没後、大半がスコットランド国立博物館に引き継がれることになったのですが、同博物館の収集方針から外れた20点余りの品が、先月のオークションにかけられたというわけです。
そこで出品された品と落札額の一覧がこちら。
ちょっと意外に思ったのは、落札額の最高は9,375英ポンド(約135万円)で、以下、千ポンド(14万円)未満で売れた品も何点かあったことです。
これならば、現行の望遠鏡の方が高いぐらいで、確かに性能を考えればそうなのかもしれませんが、これは裏を返せば、アンティーク望遠鏡は、その性能以外の「歴史的価値」や「審美的価値」が未だ十分に評価されていないということでもあります。
とは言え、私自身のこれまでの感覚に照らして、これはちょっと安すぎる気がしなくもありません。このオークションは、最低落札価格を設定しない、「慈善オークション」的性格の催しだったのかもしれません。
こういうのをヒョイと目にすると、「自分だっていつかは…」という幻想を激しく掻き立てられます。我ながら微笑ましく、美しい夢だと思いますが、ふと我に返れば、マレイ氏が旅立たれた場所に自分が赴くのも、さして遠いことではない現実に思いが至り、「たとえ夢が真実(まこと)になったとしても、真実もまた夢の如きもの…」と、望遠鏡の画像を眺めながら、ぼんやり思いにふける自分がいます。
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