甲府余談…胡蝶の教え2017年09月22日 07時11分53秒

年々歳々花は相似たり
歳々年々人同じからず

人間社会の移ろい易さと、自然の不変性――。
この詩句は古来多くの人の共感を誘ったことでしょう。
私も齢を重ねるにつれて、そうした思いに頻々と捉われるようになりました。

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先日、甲府の武田神社で一服していたら、すぐ近くの地面に一匹の蝶が舞い降りて、吸水行動を始めました。それを見て「ん?」と、軽い違和感を覚えました。


「アゲハ?…じゃないよね…あれはいったい?」
不審の念に駆られて、パシャッとやったのが上の写真。

帰宅後にネットを見たら、その正体はすぐに知れました。
すなわち、アカボシゴマダラ

日本には、もともと奄美周辺のみにいたのですが、2000年前後に大陸産の別亜種が流入し(人為的放蝶が原因と推定されています)、現在、関東を中心に分布を拡大中の由。

私の昆虫知識はほぼ40年前で止まっていますから、その姿に違和感を覚えたのは当然で、むしろ「お前さん、まだまだオツムはしっかりしてるじゃないか」と、妙な自信を感じたぐらいです。

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身近な日本の自然も、私が子供の頃に親しんだそれとは、既に異なるものとなっていることを、一匹の蝶に教えられました。そして、人為と自然は切り離せないし、自然は不変でもないことを痛感させられます。

さらに、こんなふうに「見慣れぬものの出現」は気づきやすいですが、本当は「見慣れたものがいつの間にか消えている」ことの方が、ずっと多いんだろうなあ…ということも思いました。ヒトの認識は、容易にそれに気づかないようにできているようです。

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歳々年々人同じからず
年々歳々花もまた同じからず

ちょっと寂しい気もするし、少なからず不安も覚えますが、それが真実ならば受け止めるしかありません。それに、仮にヒトがいなくたって、自然の変化はやむことがないし、生物たちはそれぞれ進化の歩みを続けることでしょう。